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小玉 節郎・評『粗忽長屋の殺人』河合莞爾・著

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古典落語をベースに謎解きを笑いで包む

◆『粗忽長屋の殺人』河合莞爾・著(光文社/税抜き1500円)

 大笑いの一冊。書名の「殺人」の部分は「ひとごろし」と読む。粗忽(そこつ)長屋の文字で落語ネタと読み取り、噺(はなし)の筋と「下げ」が思い浮かぶ人には間違いなく面白い。

 長い落語好きには、下げの後日談も落語になっていたら面白いだろう、という演目がある。この小説集はまさにその後日談。しかも落語の中で起こるごたごたの謎解きを人情噺に仕立ててある。それに加えて、たぶん、作家自身が大いに楽しみながら考えたろう「新作」の駄洒落(だじやれ)・地口(じぐち)・語呂合わせもふんだんに入っていて、落語好きとしてはうれしい限り。

 古典落語に馴染(なじ)みのない人には厄介だろうと思う。落語の面白さの一つであるくすぐりに通じていないと行間のおかしさに手が届かない。落語を「古典芸能」と思い、敷居の高いものと思う人が多いようだが、落語はごくお気楽なもの。寄席を「よせ」と読めない人さえいる日本になってしまった。

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