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こころと向き合う 危険ドラッグ、治療軽視のツケ=松本俊彦

松本俊彦氏

 昨年、私が担当する薬物依存症専門外来は、次々に受診する危険ドラッグ患者でごった返していた。

     危険ドラッグが社会問題化したのは2〜3年前からだが、私は5〜6年前には患者からうわさを聞いていた。当時「合法ハーブ」と呼ばれていたその薬物は、好ましい効果が乏しい代わりに害も少ないという詐欺めいた代物だった。ところがその後、薬物の有害性は年々強まり、最終的には覚醒剤をはるかにしのぐモンスタードラッグに成長してしまった。

     なぜこうした変化が生じたのか。規制の影響は無視できないだろう。危険ドラッグとは、既に規制された薬物が持つ化学構造式の「枝葉」に当たる部分を改造して規制を逃れてきた薬物だが、新たに規制が加わってもすぐ改造が追加されて規制を逃れる−−というイタチごっこ的な変わり身の早さが特徴である。これに対し、国は「細部が違っても基本構造が共通していたらダメ」という「包括指定」で対抗したが、この施策は社会に弊害をもたらしただけだった。というのも、全く別系統の成分を含む薬物、つまり「凶悪な作用を持つ薬物」の登場を促したからだ。事実、2回の包括指定実施後の2014年4月以降、各地で危険ドラッグが関連する交通事故が激増した。

     しかし、今年に入ってから一連の騒動は突然終わった。事故報道は激減し、専門外来を新規受診する危険ドラッグ患者も途絶えた。理由は、昨年末に施行された改正薬事法によって販売店が一掃され、薬物の入手が困難になったからだ。

     これで一件落着だろうか。私にはそうは思えない。かつて、覚醒剤と似た作用を持つ「リタリン」というナルコレプシー(過眠症の一種)の治療薬の乱用が社会問題となった。この乱用は07年の規制で終息したが、あくまで表面上の話でしかない。今でもリタリンと同じ効果のある薬物を求めてさまざまな薬物の乱用を試みたり、不安定な精神状態が続いて家族を悩ませていたりする「残党」乱用者が、時々外来を訪れる。

     治療を軽視し、取り締まりに偏った対策をとったツケは、これから長期にわたって支払わねばならなくなるだろう。(まつもと・としひこ=国立精神・神経医療研究センター部長)

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