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<安保法制・私はこう考える>恒久法の意味、考えて 憲法学者・小林節さん


憲法学者・小林節さん(66)
安倍晋三首相は、今にも他国が攻めて来そうな調子で集団的自衛権や安保法制の必要性を訴えている。全体として日米安保条約は機能しており、デマや脅迫で人々の不安心理を突く手口だ。
首相は2012年末の就任時、改憲のハードルを下げようと、改正手続きを定める96条の先行改正論を主張した。私はそれを「裏口入学だ」と批判した。だが昨年7月、9条を変えないまま解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認した。続く安保法制の整備は、堂々と正門から押し入り、居直っている印象だ。憲法9条2項は自衛隊が海外で戦争することを認めない。「海外での軍事行動は違憲」と私たちは愚直に言い続けなければならない。
憲法改正は本来、国民が大いに議論すべき問題だが、戦後長くタブー視され、一足飛びに解釈変更を許してしまった。多くを語らずにきた私たち憲法学者にも責任はある。とはいえ、世論調査によると国民は集団的自衛権の危うさに気づきつつあるようだ。
海外派遣の事前、事後に、国会が承認するかどうか判断するという。法令上そう書くに過ぎず、官邸と自民党、政府と国会の力関係をみれば事前不承認はあり得ない。戦争は始めれば足抜けはできない。ゆえに、事後不承認はもっとあり得ない。
過去、イラクやアフガニスタンなどへの自衛隊派遣は、時限立法で終わりを厳密に区切ってやってきた。今回の安保法制は、いつでも、いつまでも海外に派遣できる「恒久法」として整備される。その意味をよく考えてほしい。【聞き手・井上英介】
■人物略歴
こばやし・せつ
慶応大名誉教授。憲法を守り、必要なら改めよという「護憲的改憲論」の立場から積極的に発言する。「憲法守って国滅ぶ」など著書多数。