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幸せの学び

<その130> 信州からパリへ=城島徹

早川俊二さんと作品

 信州の山村に生まれ育ち、パリ在住40年余りになる画家、早川俊二さん(65)の作品と人柄に共鳴した中学、高校の同級生たちが奔走し、故郷での回顧展が実現した。優美で透明感のある淡い光をたたえた力作の並ぶ会場で早川さんは「信州の山々の複雑な緑の色合いが私の創作の原点。自分の信じた道は間違ってなかった」と感慨深げに語った。

     3年前の秋だった。「うちで個展をする画家が里帰りしているよ」。長野市内の美術館「北野カルチュラルセンター」事務局長の清水博純さん(65)に誘われ、四輪駆動車で山道をぬって、緑深き旧七二会村(現長野市)にある早川さんの実家を訪ねた。

     重厚な民家の居間に、かつての同級生たちと楽しげに語らう早川さんがいた。「パリで活躍する芸術家」というイメージではなく、控えめで人なつこく、「高校生のころには絵に熱中して毎朝、学校周辺の道でスケッチをしていました」とほほ笑んだ。

     中3の時に見たセザンヌの絵に触発され、東京の美術学校に進んだ。24歳で渡欧し、ミケランジェロはじめ本場の芸術作品に衝撃を受け、20代は黙々とデッサンに励んだ。30代は納得できる絵の具を探し求め、顔料から絵の具練りの研究に没頭し、本格的に描き始めたのは40代だ。美術団体に属さず、商業主義とは無縁の創作の日々が続いた。

     妻結子さんと質素な菜食主義を貫くパリの暮らしぶりに接した留学生は「穏やかで優しい気遣いのある画家」と話す。そんな人柄に同級生や恩師が「早川君の個展を開こう」と呼びかけ、450人を超える市民から協賛金や作品のカレンダーなどの収益金を集め、長野から札幌、新潟、酒田と巡回する回顧展「早川俊二 遥かな風景の旅」開催に至った。

     人物画や静物画など作品65点が展示された会場に身を置くと、浮遊感と解放感に包まれた森のような心地よさを感じる。水色がかった淡いグレーを基調とした女性像は宗教画のように神秘的な光を放ち、近づくとシャープに、離れると柔和に表情を変える。

     「絵の具の間に布地を埋め込んでいます」。専用ナイフを駆使した重層的な画法を説く早川さんに苦労を重ねた悲壮感はない。独立独歩の芸術家を早くから注目してきた読売新聞の芥川喜好編集委員は改めて「稀有(けう)の人、驚異の人、空前絶後の人」とたたえた。

     「僕の絵は技術的にはヨーロッパの技法を使っていますが、春夏秋冬の自然を慈しむ日本人ならではの感性で描いた油絵があることを示していきたいですね」。故郷の光と風や旧友たちから新たなエネルギーを得た早川さんの言葉が弾んだ。【城島徹】

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