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SUNDAY LIBRARY

私的本屋賞『オールド・テロリスト』村上龍・著

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空事ではないと思わせる物語の力

◆『オールド・テロリスト』村上龍・著(文藝春秋/税抜き1800円)

     「約80万人の中学生が学校を捨てる」「半島から来た兵士たちが日本を占領」など、刺激的な小説を書き続けている村上龍。新作は全員が70〜90代のテロ集団の物語だ。

     メディアに予告があり、渋谷のNHKでテロが起きる。

     元ジャーナリストのセキグチは、若者を洗脳し実行犯に仕立てる老人たちの存在を知る。

     読みどころはセキグチの情けなさである。このテの小説って「世捨て人同然だった男の魂に火が付き、大活躍」となるのが常だが、彼は泣き、嘔吐(おうと)し、小便をもらす。この無力さは弱さではない。現実が想像を超えた時の日本の50代男性のリアルがここにある。

     ドロドロのセキグチの周りには、人とコミュニケーションを取るのが極端に苦手で異常者に見える美女、片腕を切り落とされた変態、身長は150センチに満たないが元力士を一発で殴り倒すファイターなどが集まり、テロ集団に対抗することになる。一種異様な彼らだが、光の三原色を混ぜると白くなるみたいに、物語の中で、不思議と澄んでいる。

     そして、オールドテロリストたち。将棋士が一手を指す時いちいち血をたぎらせないように、彼らはこの国の無防備さを淡々と突く。セキグチたちと同じく、老人たちにあらがいがたい魅力を感じてしまう読者は多いはず。

     中身が物騒でも、村上龍の小説はいたずらに世の中の不安をあおったりしない。「いたずら」ではないのだ。いつ起きてもおかしくないことを、ただ静かに開示する。(東京 代官山 蔦屋書店 間室道子さん)

    <サンデー毎日 2015年7月12日号より>

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