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<社説>中2男子の自殺 SOSを阻んだものは

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 岩手県矢巾町(やはばちょう)の鉄道で中学2年の村松亮(りょう)さんが自ら命を絶った。

 亮さんは学校でいじめられ、暴力を振るわれた。担任教師と交わす「生活記録ノート」でつらさを繰り返し訴え、死も示唆していた。

 その「SOS」は担任のところでとどまり、情報を共有できなかったと学校側は言う。学校もいじめ防止対策組織が事態把握に機能せず、調査の手抜かりも指摘されている。

 だが、問題はそこにのみあったのだろうか。「課題の抱え込み」や「言い出しにくい」風土も横たわっていないか。深く掘り下げ、徹底した検証が必要だ。

 相次いだ深刻ないじめ事件を受け、2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」は、早期発見と連携した対応を主眼にしている。

 子供が孤立無援のまま追い詰められないよう、学校に対策組織の常設を義務づけ、情報を共有し、場合によって警察との連携も求めた。

 しかし、教師個人が抱え込んでしまう傾向がなかなか改まらない。

 例えば、東京都教育委員会の昨年の調査では、公立の小中高校で、いじめに学校の対策組織が取り組んだケースは20〜25%にすぎない。多くは担任が個別に対応していた。

 全体で情報共有しにくいいじめ問題の背景には、いじめ発生が、学校や教師のマイナス評価になるという受け止め方もあるといわれる。

 このため文部科学省は12年、いじめを早くに見いだし、隠さずに対応した学校をむしろ高く評価するよう都道府県教委に通知もしている。

 しかし、そうした考え方が徹底されているか。文科省の集計では、13年度に全国の学校で認知されたいじめは18万6000件近くに上るが、地域で発生度合いに大きな差異があり、とらえ方のばらつきを映しているようだ。今回の中学校も、いじめはないことになっていた。

 担務が多岐にわたり、教師が多忙な実情も見る必要がある。

 文科相の諮問機関、中央教育審議会は、多様化する学校の課題に対応するため、福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーなど幅広いスタッフも連携して当たる「チーム学校」構想を打ち出している。いじめはそうした対応が最も必要な課題の一つである。期待したい。

 だが、その大前提は、いうまでもなく、学校も地域社会も含め、いじめに対し「傍観者」にならないことだ。亮さんは「生活記録ノート」に<誰一人いない世界に一人ぼっちになったようなかんじ>と書いた。

 13歳の少年が抱いた孤立無援の絶望感を改めて思い、「SOS」に反応できなかった痛恨の教訓を、着実に生かしたい。

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