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サンデー毎日発

要注意 ブラックバイトはブラック企業へのパスポート

就職説明会で企業の採用担当者の話に聴き入る学生たち

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 ブラック企業に続き、学生を食い物にするブラックバイトが社会的問題になっている。「企業」と「バイト」、別個の問題に見えるが、バイトがきっかけとなり、ブラック企業に就職してしまう可能性があるというのだ。

    「年間、数十人が辞めていますが、サービス残業やパワーハラスメント(パワハラ)が原因と思われる人が相当数、います」

     東京都内に本社がある建設会社(大企業)に勤める男性A氏(40代)が証言する。この会社では残業をするのが当然という雰囲気ができあがっているという。

    「夜8時どころか、10時を過ぎても、特に営業部門は、ほとんどの社員が残っています」(A氏)

     営業部門は残業代の代わりに歩合に応じた手当が支払われるが、結果的に“サービス残業”になっていると説明する。同社では仕事量に見合った手当を手にしているのは、都内担当のほんの一握りの社員だけ。同じ首都圏でも千葉県や埼玉県などを担当すると、契約件数が都内ほどでないことから、残業は多いが“労多くして益少なし”に陥っているのだという。

    「結局、契約件数が多い都内の地区担当かどうかでもらえる額が変わる。顧客視点の提案をするというより、いかに自分の手取りを増やすかに執着している社員が多いのも事実。客にとっても“ブラック企業”になっているのです」(A氏)

     その上、同社ではパワハラも横行しているという。

    「営業部門の上層部は、若かった頃に体で覚えさせられてきた世代。今もそのやり方が正しいと思っているのでしょう」(同)

    「その気持ち悪い笑い方やめろよ」などと理不尽に罵倒する声が隣の部にまで聞こえてくるという。部下に命じて何時間も立たせ続ける部課長もいる。

    「新入社員の離職率が高いだけでなく、同業他社と接触するようになって他社の方がマシだと去っていく中堅社員も多い。建設、不動産業界は大手や中堅、中小を問わずサービス残業やパワハラが多いです」(同)

     広告代理店に勤める30代半ばのB氏も、サービス残業が当たり前という雰囲気が社内にできていると話す。

    「残業代をたくさん付けると『時間をかけないと仕事ができない』とレッテルが貼られ、人事異動に影響する。月に100時間は優に超えていますが、周囲の様子をうかがって、20〜30時間分しか付けていません。精神疾患での休職者は他の会社の1・5倍に上ります」

     ブラック企業は大手にも決して珍しくないが、就職活動中の学生が見極めるのは難しい。しかも昨今は、学生がブラック企業に流れやすい構造があるという。いわゆる“ブラックバイト”の存在だ。ブラック企業同様、働く者をこき使い、使い捨てにして恥じないアルバイト雇用のことだ。

    バイトでもサービス残業が横行

     ブラック企業、バイト対策に取り組むNPO法人「POSSE(ポツセ)」が出している雑誌『POSSE』の編集長、坂倉昇平氏によると、最近は特に飲食、小売り、教育関連業界でアルバイトをする学生からの相談が多いという。

    「飲食はファストフード、小売りはコンビニエンスストア、教育は個別指導塾や家庭教師がほとんどです」

     特に問題なのが個別指導塾。坂倉氏によると、このNPOに年間約600件寄せられるブラックバイト相談のうち、4割が教育関連の業界だったという。同NPOは昨年、「ブラックバイトユニオン」を立ち上げ、さらに同ユニオンが中心となって今年6月には労働組合「個別指導塾ユニオン」を結成した。

    「個別指導塾のバイト代は“コマ給”が単位で、コマの前後の準備や後片付けの時間が加味されていないのです」(坂倉氏)

     個別指導塾は通常の聴講スタイルとは異なり、1〜4人程度の生徒を相手に個々の学力に応じた教え方をする。講義なら授業計画を立てやすいが、個別指導は生徒の理解度によって速度が異なる。責任が重いだけでなく、教え子一人一人に対して綿密な指導計画の立案と、報告書作成が義務付けられているため、授業以外の作業量も多いのだ。

     しかし、実際に賃金が発生するのは授業時間(コマ)のみ。募集案内には「1コマ1800円」などとあり、一見すると時給が高いようだが、1コマは80〜90分間なので、実際に時給換算すると、最低賃金(東京都は時給888円)を下回る塾もあるという。

     ほかにも、辞めたいと申し出た学生が、塾側から1カ月以上放置された上、辞めさせてもらえないと相談してきたケースもある。

    「就活が大変だから、バイトのシフトを考慮してほしいと訴えても、『代わりがいないからできない』と言われた学生がいました。バイトが大変で就活に支障をきたす例も報告されています」(坂倉氏)

     同ユニオンは6月に、個別指導塾を展開する「明光ネットワークジャパン」(東京都新宿区)などに対して、未払い賃金が存在すると主張し、団体交渉を申し入れた。本誌の取材に同社は「担当者が不在で、締め切り日までに答えられない」としつつも、ホームページ上に「真摯(しんし)に受け止めて、事実関係を調査し、誠意を持って対応する所存です」とコメントを掲載している。

     さらに、コンビニ大手のフランチャイズ加盟店舗でバイトをしていた男子学生C君の同級生の親から、このNPOに寄せられた相談も信じがたい内容だ。

     C君から同級生に“お中元”が送られてきたというのだ。C君が店舗オーナーからノルマを強要され、達成できなかったために、困って同級生に自腹でお中元を送ったのだ。

     コンビニでのノルマといえば、冬の定番「おでん」も同様だという。販売個数のノルマがあり、達成できないバイト学生に店側が家庭用おでん鍋を貸与、「家族や友達同士でおでんパーティーを開け」とノルマ分を買わせるのだという。

     ブラックバイト自体、社会的に大きな問題だが、さらにこうした経験をしてきた学生が、就活でブラック企業を選んでしまう可能性があると、前出・坂倉氏が指摘する。

    「バイトで雇われた先から『社会では当たり前のことだ』と言われ、誤ったルールや価値観を押しつけられると、社会経験がない学生は信じてしまい、『こういうものなんだ』と思ってしまう。そうなるとエントリーした会社がブラック企業であることにすら気付かず、就職してしまうことがあり得ます」

     ブラック企業を選ばないためには、まずはブラックバイトを避けることが重要のようだが、もっと積極的に“ホワイト企業”を探す手がある。その典型として、障害者雇用を積極的に採り入れているかどうか、という観点がある。

     企業労務に詳しい「HMパートナーズ」代表で特定社会保険労務士の岩沢誠敬(のぶたか)氏によると、2013年4月から、障害者の法定雇用率、すなわち全社員のうちの障害者の割合が、民間企業の場合、2%に引き上げられた。さらに今年4月からはこの水準に達しないと「納付金」を支払わなくてはならない企業の規模が、労働者数「200人超」から「100人超」に引き下げられた。金額は雇用すべき人数1人当たり月額4万円。中堅、中小にとっては厳しいようだ。都内不動産会社の労務担当D氏がささやく。

    「社会的に大切な制度だと理解していますが、バリアフリーや対応トイレを増やすなどの環境整備や、どの部署に配属させるかなど、課題は多いです」

     障害者雇用率が高いことで知られる大手電機メーカーの「オムロン」(京都市)は14年現在、グループ全体で障害を持つ社員は227人いる。

    「人々が自立して個性を輝かせられる社会作りを目指す経営方針に基づいています。設備や職務遂行、安全確保などの面から、(障害者の)社員それぞれの必要性に応じた環境整備を心掛けています」(広報担当者)

     障害者雇用に前向きな企業は一般社員にとっても働きやすい環境になっている、と前出の岩沢氏は指摘する。

    「就活の際にも、良い職場環境を選択する一つの目安になります」(岩沢氏)

     8月1日から大手企業の面接が解禁になった。また、大学3年生にとってはインターンシップ(就業体験)が始まる夏休みに入った。ブラック企業かどうかを見定め、そういう会社に入らないよう注意することも、就活の重要な一部だ。【本誌・柳澤一男】

    8月9日号より転載。同号では、全国563大学の学部系統別実就職率ランキングの特集も掲載しています。

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