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<東日本大震災4年半> 震災関連死3331人に 半年で137人増(その1)

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 2011年3月11日に発生した東日本大震災から11日で4年半となる。警察庁によると、震災の死者は1万5893人、行方不明者は2572人となった。復興庁の集計では、震災後の体調不良や自殺などによる震災関連死は昨年9月末から今年3月末までに137人増え、3331人に上った。年代別にみると、66歳以上2957人▽21〜65歳367人▽20歳以下7人−−の順で多かった。

 復興庁によると、全国の避難者数は約19万9000人で、前年同期より約4万7000人減った。岩手、宮城、福島の3県のみなし仮設を含む仮設住宅の入居戸数は7万4335戸で、前年同期より1万9511戸減少した。

 一方、災害公営住宅の完成戸数は、計画する2万9925戸の4割弱にあたる1万1296戸。入居希望者の増減に伴う計画変更や、公営住宅地の地質が想定と異なるなどの理由で完成が遅れているという。同庁の担当者は「資材高騰や労務費の上昇の影響はあまり見えてこない」と話している。【狩野智彦】

 東日本大震災から4年半になるのに合わせて、毎日新聞は大きな被害を受けた岩手、宮城、福島県の42市町村の首長に、復興の現状や課題を聞くアンケートを行った。国は2015年度までを集中復興期間と位置づけ、手厚い財政支援を行ってきたが、16年度以降に発生する自治体負担について「財源の捻出に苦労している」などの声が相次いだ。震災の風化を懸念する首長も9割に上った。福島県内の首長からは「放射線への不安の解消や風評の払拭(ふっしょく)に多くの時間を要する」などの声が上がり、東京電力福島第1原発事故の影響が甚大であることを改めて示している。

陸前高田 市民ニーズ変化も影響

 「うわ、すごいね、これ」。市街地が壊滅的な被害に遭った岩手県陸前高田市。「奇跡の一本松」の見学者用駐車場で、仙台市の団体嘱託職員、小田中透さん(61)は、思わず頭上に目をやった。

 地上10メートルの高さを、巨大ベルトコンベヤーが走っている。総延長約3キロ。高台に新たな住宅地を造成するため丘陵を切り崩し、浸水域のかさ上げ用地に土砂を運ぶため昨年春に稼働した。

 総事業費は150億円。市内全体のかさ上げ面積(約126ヘクタール)の、ほぼ全てをまかなう計約1120万立方メートル(東京ドーム9個分)の土砂を運搬する役目を今月中には終え、10月から順次解体される。「コンベヤーを設置しなかったら、この先、何年も10トントラックが行き交っていた」と市の担当者は説明する。

 毎日新聞が42自治体の首長に行ったアンケートで、同市の戸羽太市長は復興工事の進捗(しんちょく)状況について「遅れている」と回答した。実際、今月1日までに行った住民説明会で「2016年度半ば以降」としていた複数箇所の高台造成工事の完成時期を「17年度の夏以降」に修正した。

 ついのすみかをどこにするか、住民のニーズも変化している。市が13年度に実施した調査では、より安全とされる高台への移転を希望した936の地権者が、昨秋の意向確認では590に減少した。

 高台の造成はかさ上げと比べて工事費が多額になる。市は「税を投じて空き地が生じるのは許されない」との判断から、「造成後、2年以内に業者と自宅の建築契約をする」ことを高台の土地引き渡し条件とした。この条件を示され、高台移転をあきらめた一人に、菅野啓佑さん(73)がいる。菅野さんは「年齢との闘いもあり、本当に家を構えられるのか不安が増した」と話す。

 このように、住民のニーズの変化が高台の造成計画の見直しにつながり、復興工事がさらに遅れるという側面もある。

 一方、市は商店街については、かさ上げ地の1カ所に集約する方針を示しており、土地の引き渡しは来年秋以降に始まる。費用負担や後継者不足などを理由に、廃業を考えている店も多く、「震災前と同じシャッター街になりはしないか」と心配する商工関係者もいる。【根本太一、和田浩幸】

    ◇

 復興工事の進捗状況について、首長アンケートでは42人のうち1人が「かなり進んでいる」、28人が「ある程度進んでいる」と答えた。約7割にあたる29人が「進んでいる」との認識を示し、半年前のアンケートに比べると2人減った。「遅れている」は9人、「かなり遅れている」は2人で、理由として「自治体職員の不足」「原発事故の影響」「住民の合意形成が進まない」などが挙がった。

風化「懸念」なお9割

 「震災が風化していると感じるか」の問いは、42自治体の首長に半年ごとに答えてもらっている。

 今回、「かなり感じる」は10人、「ある程度感じる」は28人で、9割にあたる計38人が「感じる」と回答した。

 震災2年の2013年3月は「感じる」が29人だったが、その後は▽同9月=36人▽14年3月=40人▽同9月=40人▽15年3月=41人−−と、震災3年以降は9割台で推移している。

 今回、「どんな時に風化を感じるか」と理由を尋ねると、多くの首長が「震災報道が少なくなり、ボランティアが減少した」などと答えた。

 観光客や宿泊客の減少を挙げる首長もおり、「被災地観光にぜひ訪れてほしい」との声も目立った。他に「集中復興期間の延長がかなわなかった」(岩手県山田町)、「派遣職員の継続に理解を示してもらえない自治体が見受けられる」(宮城県山元町)など、国や他県の自治体の対応を挙げる首長もいた。

 宮城県女川町は「風化をしていくのは世の常」としつつ、「忘れられないように当事者である我々自身がどのように行動していくかが大事」と答えた。

 一方、福島県からは8月に九州電力川内原発が再稼働したことなどを「風化」ととらえる声も。「今なお多くの国民が苦しんでおり、国の無頓着に憤りを感じる。福島の教訓を何も考えていない」(南相馬市)、「国民全体が原発事故に正面から向き合うことが希薄化している」(浪江町)などだ。

資材高騰、家再建の壁

 災害公営住宅(復興住宅)の建設や防災集団移転など被災者の住環境を立て直す事業が本格化しているが、課題も多い。11人が「業者や工事作業員の不足」、3人がセメントなどの「資材不足・高騰」を挙げた。岩手県山田町は「市場原理の法則で建築コストが高騰している。市町村では何ともしがたいので、(国などは)何らかの対策を講じてほしい」と求めた。

 高台に集団移転する場合は、当初計画より移転戸数が大幅に減少するケースもあり、10人は「計画戸数の変更など住宅ニーズへの対応」を挙げた。平地が少ない陸前高田市は最大の課題として「用地取得の難航」と回答した。

 「その他」の回答は「自治体が買い取った被災宅地の跡地利用、管理」(宮城県気仙沼市)など。

 ◆福島15市町村、首長はこう見る

復興指針、満足には遠く

 福島県の15市町村に対し、政府が6月に示した新たな福島復興指針への評価を聞いた。指針は(1)避難指示区域のうち最も放射線量が高い帰還困難区域を除く2区域(居住制限区域、避難指示解除準備区域)について2017年3月までに指示を解除する(2)精神的賠償を18年3月で終了(3)営業損害・風評被害補償は原則として17年3月まで−−としている。

 「あまり評価できない」が7人と最多で、「評価できる」「まあまあ評価できる」は計4人にとどまり、厳しい見方が広がっていることが分かった。

 南相馬市は(1)と(2)について「まあまあ評価できる」、(3)は「まったく評価できない」と分けて評価した。富岡町も(1)について「まあまあ評価できる」とした上で、(2)は「被害実態に即した適切な対応を」、(3)は「個人の事情を踏まえた賠償を」と要望した。

 「あまり評価できない」と回答した自治体に理由を聞くと、町面積の多くを帰還困難区域が占める浪江町は「解除の際は、被災自治体の住民と協議することになっており、一方的に終了することは了解できない」。また、一部に避難指示解除準備区域が残る川内村は「同一自治体の中で、精神的賠償の格差が生じ住民感情が複雑になっている」とした。

 いわき市は「評価は行わない」と回答を避けたが、(3)について「一律に打ち切ることなく、事業所の要望を真摯(しんし)にくみ取ってほしい」と要望した。

ようやく除染進む

 除染作業については「遅れている」「かなり遅れている」が計5人で、半年前の調査から4減。「かなり進んでいる」「ある程度進んでいる」が計9人で3増と、除染が進んでいることを示した。南相馬市は、避難指示区域を「遅れている」、区域外を「ある程度進んでいる」と分けて回答した。「遅れている」としたいわき市は、その理由を「1軒ごとに居住者や所有者との協議を行う必要があることや、仮置き場の確保が困難を極めた」と説明した。

帰還、生活環境整備から

 住民の帰還に向けた課題について複数項目から一つを選択する方式で尋ねた。「買い物、医療など日常生活の環境整備」が5人と最多で、「除染」3人▽「コミュニティーの再生」2人▽「教育環境」1人。「その他」(無回答含む)の4人のうち、いわき市は「原発事故の収束と放射線の不安解消」を挙げ、浪江町は「廃炉作業中の原発プラントは安全か。その不安を払拭しない限り、帰還は促進しない」と訴えた。

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