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安保法成立

クローズアップ2015 安保法案成立へ 武力行使、裁量を拡大

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「歯止め」かからぬ恐れ

 安全保障関連法案の最大の狙いは、憲法9条の下で抑制的だった自衛隊の活動を拡大し、政府の裁量の幅を広げる点だ。安倍内閣は国会答弁で「歯止め」をかける姿勢を示したが、恣意(しい)的な解釈や判断ミスが起きない保証はない。政府は今後、4月に改定した新たな「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」に基づき日米同盟を深化させる考えだが、米国の戦争に巻き込まれる懸念も残ったままだ。【青木純、飼手勇介】

     「自衛隊はもう、憲法9条の陰に隠れることはできない。政府の求めに応じ、あらゆる任務をこなしていくことになるかもしれない」。内閣法制局幹部はこう話し、関連法案が成立すれば、自衛隊の海外での活動が大きく広がる可能性があることを指摘した。

     政府内では冷戦終結後、国際社会のニーズに応えて自衛隊の海外派遣の拡大を図る外務省と、部隊の能力や隊員の安全を考慮し、派遣に慎重な防衛省がせめぎ合ってきた。「ブレーキ」役を果たしたのが、武力行使を禁じた憲法9条だ。

     政府は「自衛隊が武力を使えるのは日本が直接攻撃を受けた時のみ」という憲法解釈の下、海外で武力を使うことがないよう数々の歯止めをかけながら、国際平和協力や他国軍への協力を拡大してきた。今回の法整備の特徴は、制約をできる限り取り払い、憲法解釈で認められるギリギリの範囲まで自衛隊の活動を広げることにある。

     集団的自衛権の行使容認で、日本は自国への攻撃の有無にかかわらず武力行使が可能になった。軍事行動中の他国軍への支援も柔軟に実施可能としたほか、国際平和協力活動での武器使用も拡充。首相周辺は「憲法や法律に縛られるのではなく、日本の安全のために政府がやる、やらないを判断する。それが『普通の国』だ」と強調する。

     だが、政府の裁量が広がることへの懸念は根強い。安倍晋三首相をはじめ政府は、集団的自衛権行使の要件である「日本の存立を脅かす明白な危険」の有無を「総合的に判断する」と繰り返してきた。民主党の岡田克也代表は18日の衆院本会議で「武力行使の判断を時の内閣に白紙委任するのと同じで、立憲主義に反している」と批判。他国軍への支援も政府が「日本に重要な影響がある」と判断すれば実施できるため、「ブラックボックスだ」(民主党の長島昭久衆院議員)との指摘が絶えない。

     首相は「自衛隊に活動を命じる際は、法律に従うだけでなく国会の判断も仰ぎ、民主主義国家として慎重の上にも慎重を期して判断する」と理解を求めた。しかし過去には、日本政府も支持表明した米英両国のイラク攻撃(2003年)で、攻撃理由となった大量破壊兵器は最後まで見つからなかった。政府関係者でさえ「海外での自衛隊の活動が後に『間違っていた』と評価される危険は常にある」と指摘する。

     政府の判断ミスを防ぐには、国会の関与が鍵を握る。政府が集団的自衛権の行使▽他国軍への支援▽治安維持など国際平和協力活動−−を自衛隊に命じる際には、国会承認が不可欠なためだ。緊急時に事前承認なしで派遣した場合でも、国会は撤収を要求することも可能だ。法案作成に深く関与した政府高官は「国民は緊張感を持って国会議員を選び、自衛隊の活動に『縛り』をかけていくべきだ」と述べた。

    法律上の規定なし

     安全保障関連法案によって拡大する自衛隊の活動を巡り、衆参両院の平和安全法制特別委員会で、安倍晋三首相らは「答弁」で活動を制限する考えを繰り返した。ただ、政府答弁は法律に明記されていないため、今後活動を限定する「歯止め」にはなり得ないとの疑念はぬぐえない。

     政府が答弁を「歯止め」と位置付けた代表例と言えるのが、中東・ホルムズ海峡が機雷で封鎖された場合の集団的自衛権行使による機雷除去だ。首相は14日の参院特別委で「今の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することは想定していない」と説明し、当面は必要ないとの認識を示した。

     武力を使った機雷除去には、野党から「石油のために武力を使えば満州事変と同じだ」(民主党・大串博志氏)といった批判が相次ぎ、野党はホルムズ海峡の機雷除去を除外するよう求めた。首相の答弁にはこうした批判をかわす狙いがあったとみられる。ただ、首相は、必要があれば可能との立場は崩していない。

     首相は過激派組織「イスラム国」(IS)への対応に関しても、法律にはない「歯止め」をアピールした。有志国連合によるIS掃討作戦に対して「政策判断として参加する考えはない。空爆への後方支援も全く考えていない」と強調した。民主党の細野豪志政調会長は「現内閣の現時点での判断で、将来まで保証するものではない」と疑問を呈した。

     首相は武力行使のために自衛隊を他国領域に派遣する「海外派兵」に関しても、ホルムズ海峡での機雷掃海以外は「念頭にない」と語った。

     他国軍への支援では、中谷元(げん)防衛相が核兵器や劣化ウラン弾などの輸送や、核兵器を搭載した戦闘機への給油などについて「法律上は可能」と述べたうえで「想定していない」と答弁した。中谷氏はまた、支援を行う自衛隊の活動場所に関して「活動期間中、戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を指定する」と述べた。いずれも自衛隊の活動を制限する重要な答弁だが、法律上の規定は設けられていない。

     首相周辺は「首相や閣僚の国会答弁は重い意味を持ち、将来の政府の判断をしっかりと縛ることができる」と歯止めの役割を強調するが、政府が安全保障環境の変化などを理由に見解を変更する可能性は残る。

     過去には米軍への後方支援の実施場所について小渕恵三首相(当時)が「中東、インド洋は想定されない」と国会で答弁したが、後に政府見解で「中東、インド洋も排除できない」と改めた例がある。政府答弁の性格について、民主党の北沢俊美元防衛相は14日の特別委で、「今は政策的にやるつもりはないと言っているだけだ。政権が代われば何の歯止めにもならない」と懸念を表明した。

    狙いは米国引き留め

     安全保障関連法案は、日米両政府が4月にまとめた新たな「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」で掲げた数多くの日米協力を実現するために不可欠だった側面も大きい。

     新ガイドラインには、さまざまな状況を想定した共同作戦づくり▽情報収集活動における連携強化▽日本による集団的自衛権の行使▽国際的な活動での協力−−などが盛り込まれている。安倍晋三首相は国会審議で「日米同盟を強化し、日本の守りをより固められる」とアピール。5月の衆院特別委審議で「米軍との共同対処で自衛隊の力を十分に発揮できるようになる。日ごろからの協力により『日米同盟は完全に機能している』との発信につながり、海外から侵略されずに済む」と訴えた。

     その半面、米軍との協力拡大により日本の人的・金銭的な負担が増える可能性は高い。今月17日の参院特別委で生活の党の山本太郎氏は、米軍の準機関紙に掲載された「2016年の米国防予算は、日本が同盟国を守るための法案を成立させることを見込んでいる」との記事に触れ、「日本は防衛予算を増やさざるを得ないのではないか」と追及。15日の中央公聴会に出席した浜田邦夫元最高裁判事も「米国の狙いは自国民の死傷者や税金を減らし、日本に肩代わりさせることだ」と主張した。

     こうした指摘に、首相側近は「安保法制は米国を『引き留める』ためのものだ」と本音を漏らす。軍事力を増強し続ける中国に対抗するには日米同盟の維持は不可欠で、米国をつなぎとめるには、米国への貢献度を高めるしかないとの考えだ。

     米国は今後、ガイドラインに基づき世界各地での軍事行動への参加や協力を求めてくるとみられる。首相は「(自衛隊の運用は)日本が主体的に判断する」として米国の戦争へ巻き込まれることを否定するが、野党は「装備、情報、やられたらやり返す能力を米国に依存しているのに、どうして主体的な判断ができるのか」(民主党・前原誠司元外相)と疑問を投げかける。

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