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政権運営目標 「GDP600兆円」見通せず 「新三本の矢」迫力不足

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 安倍晋三首相が24日、名目国内総生産(GDP)を足元より2割多い600兆円に拡大する目標を表明した。具体策として▽強い経済▽子育て支援▽社会保障−−の「新三本の矢」を打ち出したが、市場では「万人受けを狙った施策で、真に経済成長の起爆剤となるかは未知数」(民間エコノミスト)との声が多い。海外景気も中国経済の変調などで不透明感を増しており、GDP600兆円は単なるスローガンに終わる可能性がある。【宮島寛】

 「雇用は100万人以上増え、2年連続で給料も上がり、この春は17年ぶりの高い伸びだった。倒産件数も大きく減少し、デフレ脱却はもう目の前だ」。首相は24日の記者会見で安倍政権の経済政策「アベノミクス」の成果を誇った。

 しかし、政府が8日に発表した4〜6月期の実質GDP改定値は年率換算で1・2%減とマイナス成長だった。円安で企業収益は改善したが、昨年4月の消費増税後、消費低迷が続き、国民は景気回復の恩恵を実感できずにいるのが実情だ。

 このため、首相はGDP600兆円を「明確な目標」と位置づけ、子育てや介護支援で女性の社会進出を促して人口減で先細りする労働力を補填(ほてん)するとともに、出生率の回復も狙う。宮前耕也SMBC日興証券シニアエコノミストは「人口減に歯止めがかかれば、企業も投資を積極化し、雇用や賃金が増えて消費を誘発するという、アベノミクスが本来狙っていた経済好循環が実現できる」と評価する。

 しかし、GDP600兆円という大目標の割に個別施策は迫力不足だ。第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは首相が労働規制改革に触れなかったことを問題視。「経済の実力である潜在成長力を高めるには成長産業への大胆な人材シフトが不可欠だが、首相は賛否の分かれる施策を避けたのではないか」と指摘した。

 自民党内では海外経済の変調を背景に景気対策を求める声が強まっている。永浜氏は「子育てや介護支援名目で安易な公共投資に走るようでは構造改革はおぼつかない」と警鐘を鳴らす。

「介護離職ゼロ」壁高く

 親などの介護のために仕事を辞めざるを得ない「介護離職」への対策は、40歳代になった団塊ジュニア世代(1971〜74年生まれ)が今後、介護に直面することを考えると、緊急の課題だ。ただ、現在も介護離職は年間10万人前後に上っており、ゼロ実現は簡単ではない。

 介護離職は、介護サービス不足などが原因とみられる。施設不足も深刻で、特別養護老人ホーム(特養)に希望しても入れない入所待機者は13年度に約52万人、うち施設への入所対象となる要介護3以上の人は約15万人だ。

 安倍首相は目標実現のための施策の一つに施設整備を挙げた。厚生労働省によると、特養の定員は今後10年間で20万人増え、74万人分となる見通しだ。だが、65歳以上となっている団塊の世代の介護需要が伸びれば、計画前倒しや見直しを迫られる可能性があり、財源確保が課題となる。

 一方、厚労省は高齢者が暮らしなれた地域で生活を続けられるよう在宅サービスなどを充実させる「地域包括ケア」を進めており、同省内には「その理念から離れる」との指摘もある。【阿部亮介】

■KeyWord アベノミクス

 2012年12月に発足した安倍政権の経済政策を示す造語。大胆な金融政策▽機動的な財政政策▽民間投資を喚起する成長戦略−−の「三本の矢」を柱とし、物価が下がり続け経済規模が縮小するデフレからの脱却と経済再生を目指す。政権発足後、日銀の異次元緩和で金融市場では大幅な円安・株高が進み、輸出産業を中心に企業業績は改善。賃上げの動きが広がったほか、公共事業中心の大規模補正予算の効果で失業率など雇用指標も堅調を維持する。だが、円安による物価上昇は、個人消費に打撃を与え、14年4月の消費増税後には消費低迷が深刻化。持ち直し基調が続いてきた国内景気は現在、踊り場状態に入っている。

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