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SUNDAY LIBRARY

高橋 敏夫・評『卜伝飄々』風野真知雄・著

◆『卜伝飄々』風野真知雄・著(文藝春秋/税抜き1550円)

  なるほど。卜伝(ぼくでん)、飄々(ひようひよう)か。戦わずに勝つ無手勝流を実践したといわれる塚原卜伝(1489年〜1571年)には、どこか、とらえどころのない飄々とした印象がある。それでいて、上泉信綱や伊東一刀斎とならぶ戦国時代屈指の剣豪である。ふつうなら矛盾することがなんなく両立してしまうところに、卜伝の凄(すご)さも、おもしろさもあるのだろう。

 作者風野真知雄は、こんな飄々とした剣豪像を、老年の卜伝にみいだす。三度目の長い旅にでたばかりの卜伝は、60歳をとうに超えていた。修行一筋の旅でも、名声に頼る旅でもない。卜伝は、いよいよ「塚原卜伝」がわからないのだ。偉いのか強いのか、こんな生き方でよかったのか。もはや生きているのか死んでいるのかさえ、はっきりしない。にもかかわらず突如、月を斬ってみたいなどと不可能事を切望する。

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