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10月2〜4の3日間、仙台市内で行われた「仙台クラシックフェスティバル」。まずは一夜限りのアンサンブル、せんくら・フェスティバル・ソロイスツを聴いた。ヴィヴァルディの《四季》から、“春”“夏”“冬”でソリストを務めたスヴェトリン・ルセフ、渡辺玲子、大谷康子(いずれもヴァイオリン)らは、スピード感と求心力を失わずキレのある演奏。チェンバロの鈴木優人も緩急巧みにさりげなくアンサンブルを率い、古楽界の逸材ならではの手腕を見せた。
仙台国際音楽コンクールにちなんだコンサートも複数企画された。コンクールの覇者、スヴェトリン・ルセフ(ヴァイオリン)とタン・シヤオタン(ピアノ)の1曲目、モーツァルトのソナタK.304はルセフにしては控えめな語り口がやや意外。続くフランクのソナタでは前半、タンが重かったものの、ルセフが圧倒的なテクニックと豊かな色彩でリードし、ヴァイオリンの妙技を響かせた。
おなじみの演奏家のほか、今年は初出演の上原彩子(ピアノ)や若き実力派、宮田大(チェロ)らも華を添えた。タンゴづくしのプログラムでも宮田の音色がさえる。すべてのアレンジを手掛けた共演者、三浦一馬(バンドネオン)のセンスの良さには脱帽した。
地元の仙台フィルは、連日、室内楽やオーケストラで健闘。首席奏者の西沢澄博(オーボエ)、ダヴィッド・ヤジンスキー(クラリネット)、水野一英(フォゴット)によるEnsemble TAGAはモーツァルトやミヨー、ルトスワフスキを組み合わせた味わい深いプログラムを聴かせた。中でもミヨーの《コレットによる組曲》op.161は、各小品の持つ対位法やメヌエットなどのバロック的要素を的確に捉えた名演。ルトスワフスキのトリオでは絶妙なアンサンブルが不協な旋律を美しく際立たせ、トリオ・ダンシュの美しさに酔うひとときとなった。オーケストラ公演では仙台フィルでかつて正指揮者を務めた山下一史が再び来仙し、ファンを喜ばせた。ブラームスのハンガリー舞曲第5番やラヴェルのボレロほか名曲を披露したが、躍動感あふれる演奏で、オーケストラも山下の棒によく応えた。(正木 裕美)
本稿で取り上げた公演の日程とプログラム
【せんだいクラシックフェスティバル】
10月2日(金)、3日(土)、4日(日)
※日立システムズホール仙台、イズミティ21、エル・パーク仙台ほか仙台市内で開催
▽せんくら・フェスティバル・ソロイスツ=10月2日19:00
ヴァイオリン:西江辰郎、スヴェトリン・ルセフ、渡辺玲子、川久保賜紀、大谷康子、松山冴花、西本幸弘
ヴィオラ:佐々木真史、飯川直美
チェロ:原田哲男、吉岡知広
コントラバス:助川龍
指揮・チェンバロ:鈴木優人
ヴィヴァルディ:《四季》 ほか
▽Ensemble TAGA(木管三重奏)=10月3日15:00
オーボエ:西沢澄博
クラリネット:ダヴィッド・ヤジンスキー
ファゴット:水野一英
ミヨー:コレットによる組曲Op161
ルトスワフスキ:トリオ ほか
▽スヴェトリン・ルセフ(ヴァイオリン)×タン・シヤオタン(ピアノ)=10月3日16:30
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタホ短調K304
フランク:ヴァイオリン・ソナタイ長調
▽宮田大(チェロ)×三浦一馬(バンドネオン)=10月3日19:00
ガルデル:首の差で
ピアソラ:ル・グラン・タンゴ ほか
▽上原彩子(ピアノ)=10月4日11:45
チャイコフスキー/上原彩子、ミハイル・プレトニョフ:バレエ音楽《くるみ割り人形》より

▽仙台フィル スペシャル・コンサート=10月4日17:15
指揮:山下一史
管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団
マスカーニ:歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲
ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界より》第4楽章 ほか
筆者プロフィル
正木 裕美(まさき ひろみ)国立音楽大学(音楽教育学)、同大学院(音楽学)修了。クラシック音楽の総合情報誌「音楽の友」編集部勤務を経て、現在は仙台市在住。「音楽の友」編集部では、全国各地の音楽祭を訪れるなどフットワークを生かした取材に積極的に取り組んだ。東日本大震災発生後、仙台に移り住み、同市を拠点に東北各地の音楽状況や音楽による復興支援活動などの取材に力を入れている。