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<第69回読書世論調査>読書教育の場は「家庭」 調べ物「ネットで」6割(その1)
インターネットで手軽に情報を入手できるようになった今、人々はどのように本と付き合っているのだろうか。毎日新聞の「第69回読書世論調査」では、読書習慣の身につけ方や、分からないことを調べる方法などを尋ねた。子どもの読書教育では学校より家庭を重視したり、調べ物はネットに頼りながらも縦書きの文章を好んだり。スマホ時代を生きる人々の意識を探った。【浜田和子、児玉平生、今村茜、大隈慎吾、佐藤航】
「学校」回答の2倍 読み聞かせ経験、7割超
子どもの頃、保護者から「本を読みなさい」と言われた人も多いだろう。
調査では「子どもに本を読む習慣を身につけさせるのに最も役立つのは?」と尋ね、七つの選択肢から答えてもらった。家庭を重視する内容の三つの選択肢を選んだ人が6割を超え、学校を重視する三つの合計は3割にとどまった。
内訳は、家庭重視系が「家庭で読み聞かせや読書の時間をつくる」32%▽「家に子どもが読みたくなる本を置いておく」16%▽「親が書店や図書館に連れて行く」14%。学校重視系が「学校で読み聞かせや読書の時間を設ける」18%▽「学校図書館を充実させる」6%▽「学校の国語の授業を充実させる」5%。
「学校より家庭」と考える人が多くなった背景には、それぞれの育った環境がかかわっているのかもしれない。「子どもの頃、家族や先生から本を読んでもらった経験があるか」を聞いたところ、「ある」71%、「ない」27%だった。10代〜30代は9割以上が「ある」と回答。40代80%、50代66%と世代が上がるにつれて少なくなる傾向にあり、家庭での読み聞かせが戦後、次第に浸透していったことがうかがわれる。
「子どものころに本を読む習慣を身につけていると、大人になっても読書をすると思うか」との質問には81%が「そう思う」と答えた。三つ子の魂百までと言うが、他方でスマートフォンやパソコンが普及し、大人も含め家庭全体の活字離れも懸念されている。

近所に書店「ない」3割
書店の閉店が全国で相次いでいる。
調査では「自宅から気軽に行ける場所に書店があるか」を質問。65%が「ある」と答えたのに対し、「かつてあったが、今はない」が18%で、「もともとない」の15%と合わせて3割以上が「ない」。町村部では「ない」が45%に達した。
「本や雑誌を主にどこで入手するか」を尋ねたところ、「大規模書店」の29%と「中小書店」の25%を合わせて5割以上が「書店」と回答。「インターネット書店」は7%にとどまり、「コンビニ、スーパー内の書籍・雑誌コーナー」の10%、「図書館で借りる」の9%を下回った。
ネットショッピングの利用が広がる中でも「本を買うなら書店」と考える人はなお多い。では、「まちの書店に何を期待するか」。複数回答で答えてもらったところ、64%が「さまざまな種類の本が並んでいる」を選んだ。豊富な品ぞろえの中から好みの本を手に取って探せるのが書店の最大の妙味と言えそうだ。次いで「読書ができるカフェや雑貨店などが併設されている」が29%、「おすすめの本を紹介してくれる」が27%。本を売るだけではない付加価値の提供も重要なポイントとなっている。
1カ月平均の本(雑誌・漫画を含む)の購入費を聞いたところ、「1000円未満」39%、「1000〜2000円未満」25%で、「本は買わない」と答えた人も17%いた。書店に行く頻度は「少なくとも月に1度」37%、「数カ月に1度」26%で、「ほとんど行かない」は22%。限られた需要をどう引きつけ、広げていくのか。生き残りをかけた書店の模索が続く。
「人生変えた」本も
若い頃に読んだ本は人生を変えるか。「自分の生き方に影響を与えた本に出合ったことがあるか」を聞いたところ、「ある」が29%、「ない」が64%だった。
「ある」と答えた人にはいつごろかを質問。「10代前半」の19%と「10代後半」の22%を合わせて4割が10代。「20代」が24%、「30代以上」が23%だった。
その書名を書いてくれたのは559人。「赤毛のアン」を挙げた人が13人で最も多かった。挙げられた本は約400冊。ジャンルは小説、宗教書、伝記、ビジネス書、童話、漫画など多岐にわたった。

「読書率」横ばい
普段、読書をすると答えた人の割合「読書率」は書籍49%(前年比3ポイント減)、雑誌50%(1ポイント増)、書籍か雑誌のいずれかを読む総合読書率70%(1ポイント増)とほぼ横ばい。
2013年から調査方法が調査員が回収する「留め置き法」から郵送に変わったため単純に比較はできないが、この10年間、大きな変化はない。
漫画を読む割合は19%(3ポイント減)、ビデオ・DVDを見る割合は42%(5ポイント減)だった。
1日に読んだり見たりする平均時間は、雑誌のみ前年から増えて21分(3分増)となったが、書籍27分(3分減)、漫画6分(3分減)、ビデオ・DVD30分(7分減)と軒並み減少。冊数や本数は、1カ月平均で書籍1・3冊、雑誌1・4冊、漫画0・7冊、ビデオ・DVD1・8本だった。
「女性自身」23年連続V
「この1カ月に読んだ週刊誌」を25誌から複数回答で選んでもらったところ、「女性自身」の15%が最多だった。現在の質問形式にした1993年以降、23年連続トップ。選んだ人の7割は50代以上の女性で、中高年女性の支持が根強い。
続いて2位「週刊文春」12%▽3位「週刊新潮」11%▽4位「週刊現代」10%−−と男性向けの週刊誌が並んだ。これらは60代以上の男性が主な読者層だが、文春と新潮は50代以上の女性も手に取っている。
テレビ番組情報誌はネット時代の荒波にさらされ、前年10位だった「TVガイド」が15位に落ち込んだ。
前年11位の「サンデー毎日」が9位、同16位の「AERA」が13位と新聞社系の週刊誌が順位を上げた。
■主な質問と回答
◆子どもの頃、家族や先生から本を読んでもらった経験がありますか。
全体 男性 女性
ある 71 69 73
ない 27 29 25
◆子どもの頃に本を読む習慣を身につけていると、大人になっても読書をすると思いますか。
そう思う 81 80 83
そう思わない 17 19 16
◆子どもに本を読む習慣を身につけさせるのに最も役立つのはどんなことだと思いますか。
学校で読み聞かせや読書の時間を設ける 18 19 18
学校の国語の授業を充実させる 5 5 4
学校図書館を充実させる 6 7 5
家庭で読み聞かせや読書の時間をつくる 32 28 36
親が書店や図書館に連れて行く 14 14 14
家に子どもが読みたくなる本を置いておく 16 19 14
その他 3 4 2
◆本(雑誌・漫画を含む)の購入費は1カ月に平均でどれくらいですか。
1000円未満 39 36 42
1000〜2000円未満 25 27 23
2000〜3000円未満 9 11 8
3000〜4000円未満 3 3 3
4000〜5000円未満 2 3 1
5000円以上 2 3 1
本は買わない 17 15 18
◆どのくらい書店に行きますか。
ほぼ毎日行く 0 0 0
少なくとも週に1度は行く 12 15 10
少なくとも月に1度は行く 37 35 39
数カ月に1度は行く 26 26 26
ほとんど行かない 22 22 22
◆自宅から気軽に行ける場所に書店がありますか。
ある 65 65 66
かつてあったが、今はない 18 19 17
もともとない 15 15 15
◆まちの書店に何を期待しますか。(いくつでも)
ベストセラーが買える 14 11 16
さまざまな種類の本が並んでいる 64 63 65
おすすめの本を紹介してくれる 27 22 30
読書ができるカフェや雑貨店などの併設 29 24 34
作家のサイン会や読み聞かせなどイベント 5 4 7
24時間いつでも営業している 17 21 14
その他 6 6 6
◆本や雑誌を主にどこで入手しますか。
大規模書店 29 31 28
中小書店 25 24 26
新古書店(リサイクル書店) 2 2 2
古本屋 1 1 1
駅の売店 1 0 1
コンビニ、スーパー内の書籍・雑誌コーナー 10 11 10
インターネットの書店 7 7 6
図書館で借りる 9 7 10
他人から借りる、もらう 3 2 3
<借りる、もらうを選んだ人以外に>なぜ本を買いますか。(いくつでも)
本をじっくり読むため 70 68 73
本を手元に置くため 30 26 34
調べものをするため 26 29 23
本を家族や知人に贈るため 6 2 9
その他 5 5 6
◆自分の生き方に影響を与えた本に出合ったことがありますか。
ある 29 29 30
ない 64 67 62
<「ある」と答えた人に>その本に出合ったのはいつごろですか。
10歳未満 6 6 7
10代前半 19 16 21
10代後半 22 25 20
20代 24 28 22
30代以上 23 20 25
◆どんなジャンルの本(雑誌・漫画を除く)を読みますか。(いくつでも)
宗教・哲学・倫理 14 14 14
歴史・地理 23 33 15
自然科学・環境 12 17 8
経済・産業・マネー 15 26 6
社会 9 14 4
政治 7 11 3
健康・医療・福祉 33 21 43
趣味・スポーツ 44 54 36
暮らし・料理・育児 38 9 62
日本の小説 45 41 47
外国の小説 15 11 17
写真集 8 7 9
エッセー・詩・短歌・俳句 14 9 18
ノンフィクション 19 18 20
児童書・絵本 12 3 20
その他 4 4 4
この1カ月に読んだ週刊誌トップ15
全体 男性 女性
<1> (1)女性自身 15 2 26
<2> (3)週刊文春 12 15 9
<3> (6)週刊新潮 11 15 8
<4> (2)週刊現代 10 16 5
<5> (5)女性セブン 9 1 16
<6> (7)週刊朝日 8 11 5
<7> (4)週刊少年ジャンプ 7 11 4
<8> (8)週刊女性 7 2 12
<9>(11)サンデー毎日 5 7 3
<10>(12)週刊ポスト 5 8 2
<11>(14)日経ビジネス 5 8 2
<12>(13)週刊少年マガジン 4 7 1
<13>(16)AERA 3 4 2
<14>(15)an・an 3 1 5
<15> (9)FRIDAY 3 5 1
<15>(10)TVガイド 3 2 3
※複数回答。数字は%。同率は回答者が多い方を上位にした。15位は回答者数が同じ。かっこ内は前年の順位。