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梯 久美子・評『廃駅ミュージアム』笹田昌宏・著

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いったん失われたら、取り戻すことはできない

◆『廃駅ミュージアム』笹田昌宏・著(実業之日本社/税抜き1700円)

 北海道のJR室蘭線に小幌という無人駅がある。二つのトンネルの間のわずか87メートルの切れ間に位置し、せり出す山と断崖絶壁にはさまれている。日本一の秘境駅といわれるこの駅、合理化のため先月末で廃止になるはずだったが、地元の豊浦町が維持費管理費を負担すると申し出て、とりあえず存続が決まった。

 この駅の存在を知ったのは、渡辺一史さんの『北の無人駅から』という本によってだった。駅の崖下の洞窟には、円空仏(熊に首を食いちぎられた「首なし観音」!)が祀(まつ)られている。江戸時代、円空がここに籠もって仏像を彫っていたのだ。このあたりは明治時代にイザベラ・バードが旅したところでもある。いつか行ってみたい駅のひとつで、存続のニュースに胸をなでおろしたが、今後どうなるかは予断を許さない。惜しまれつ…

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