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平松 洋子・評『建築から都市を、都市から建築を考える』槇 文彦/語り

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建築は、人間を置き去りにしてはいけない

◆『建築から都市を、都市から建築を考える』槇 文彦 松隈 洋/聞き手(岩波書店/税抜き1900円)

 今年7月17日、新国立競技場の建設計画の「白紙撤回」が表明された。市民や識者、建築家による反対運動の成果として拍手したが、いっぽう、どこか腑(ふ)に落ちない思いを抱いたのも事実である。衆院本会議での安保法案可決は同月16日、その翌日、唐突に発表された「白紙撤回」に安保法案可決とのあざとい天秤(てんびん)を感じたのは、もちろん私だけではないだろう。そもそも議論を尽くした上での決定ではなかった。根深い不信感は、その後、デザインビルド方式の入札の進展が不可視であることを考えれば、よけいに拭いづらい。

 本書は、新国立競技場の建設計画の危険性と倫理性についていち早く指摘、反対運動の主軸となってきた建築家、槇文彦の語りで構成されている。聞き手は近代建築史家、松隈洋。絶好の聞き手を得て、前半は半世紀以上におよぶ建築家の軌跡、後半は日本の建築と都市が孕(はら)む問題点と展望、一冊をつうじて問いかけるのは、空間という価値の大きさだ。

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