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池内 紀・評『大地の五億年…』『蝦夷志 南島志』

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知っているようで知らないことを掘り当てる

◆『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』藤井一至・著(ヤマケイ新書・山と溪谷社/税抜き900円)

◆『蝦夷志 南島志』新井白石・著/原田信男校注(平凡社・東洋文庫/税抜き3300円)

 すべて土の話である。赤い土、黒い土、赤茶けた土、凍った土、マツ林の土、水田の土……。どっさり写真がついていて、おおかたが土の写真である。掘り返して、測量の人がもつような長い棒状の目盛りがそえてある。例外的に人間が出てくると、「フン尿と大根を交換する農民」の図。その本を息もつかせず読みふけった。気がつくと五億年もの旅をしていた。

 どうしてこんなにおもしろいのだろう? まるきり知らなかったことが語られているからだ。土というものが、はじめは存在しなかったということを知らなかった。はじめからあったものだと思っていた。日本の土が、かなり特殊なものだということも知らなかった。土は土であって、多少のちがいはあれ、地球上のおおかたが同じような土で成り立つものと思っていた。赤土は痩せた土で、黒土が肥えた土で、当然、作物には黒土がいいと思…

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