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未来へのバトン

COP21 パリ協定合意へ 削減、実効性に不安

 京都議定書以来となる地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」が12日、パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択される見通しとなった。温室効果ガス削減目標達成の義務化は見送られ、対策の実効性には懸念も残るが、国際社会が温暖化の抑制に大きくかじを切る中、化石燃料に依存しない「脱炭素」を基本とするビジネスが本格化し始めた。【パリ渡辺諒、矢野純一、坂井隆之】

    参加優先し「骨抜き」

     「世界全体が参加する前例のない合意だ」「合意はそれぞれの国にとって、完璧なものではない。しかし、地球にとっては成功だ」

     議長国フランスが最終合意案を説明した12日の会合で、オランド大統領は胸を張った。各国の代表らは一斉に立ち上がり、会場には割れるような拍手が響いた。

     各国は2009年にコペンハーゲンで開かれたCOP15で、京都議定書に代わる新たな合意を目指したが、失敗。交渉をやり直し、ここまで6年かかった。温暖化の影響とみられる災害が世界で頻発する中、すべての国が参加する新たな枠組みの実現は悲願だった。

     だが、合意を優先して妥協を重ねた結果、文書から対立点は削られ、あいまいな表現も目立つ。途上国の環境NGOのメンバーは「きれいな言葉だけが並び、削減に向けた義務が担保されていない」と語った。

     地球温暖化による海水面上昇で深刻な影響を受けるとされる島しょ国などでつくる「気候脆弱(ぜいじゃく)性フォーラム」の主要メンバー国の政府関係者は、「合意するのはいいが、我々の不安は解消されない。国土が失われる危険は去っていない」と不満を漏らした。同国は、過去20年間に受けた気象災害の深刻度を示す国別ランキングで、毎年上位に名を連ねる。

     パリ協定の最大の目的は、温室効果ガスの削減だ。「本来は、各国の削減目標の達成を義務化し、達成できない場合には罰則を設けるといった強制力が求められていた」(国連関係者)。だが、連邦議会上下両院で温暖化対策に消極的な野党・共和党が多数を占める米国に配慮した形で、達成の義務化は見送られた。

     世界の平均気温は、18世紀の産業革命前は現在より約1度低かった。各国が削減目標を達成しても、今世紀末には気温が産業革命前に比べ2・7度上昇するとみられている。島しょ国などでは、国土の多くが水没する危機に直面する。「各国が出している削減目標はパーフェクトではない」。米交渉団のトッド・スターン特使自身も2度未満に抑えるという目標達成を見通せない中の「骨抜き合意」であることを事実上認めた。

     削減の実効性を高めるため、パリ協定では各国の削減目標を5年ごとに見直すことに加え達成状況を報告することを義務とする。罰則はないが、達成状況が悪ければ世論の反発が予想され、取り組み強化の後押しになると期待する。また見直しの際に各国の目標が適切かを事前に検証する制度も導入し、将来的に目標を引き上げることを狙う。

    「脱炭素」動く企業

     パリ協定によって、今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指す目標が明記されることは、企業の行動にも大きな影響を与えそうだ。50年後を見据え、企業の間では「脱炭素化」の動きが始まっており、協定は本格的な競争開始の号砲とも言える。

     「『炭素ゼロ』を目指すには飛躍的技術革新が必要だ」。米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は11月30日、COP21の開幕イベントでこう呼びかけた。同氏は米アマゾンなど世界の企業家と基金を設立し、革新的エネルギー開発に年間20億ドル(約2400億円)を投資する計画も発表した。世界の投資資金の呼び水にする構想を示した。

     COP21では、企業側から厳格な目標設定の要求や大胆な排出削減の表明が相次いだ。英複合企業ヴァージン・グループ創業者のブランソン氏は講演で「我々が望むのは、明確な長期目標が決まることだ。いったん決まれば企業はそこに向かうことができる」と強調。同社独自に2050年までに「温室効果ガス排出実質ゼロ」を目指すことも表明した。英・オランダ日用品大手ユニリーバのポルマン社長も「パリに集まるリーダーに、企業が脱炭素化を加速させていることを示したい」として、30年までに全使用電力を風力発電など再生可能エネルギーにすると発表した。

     企業の積極姿勢の背景には排出削減が不可避である以上、いち早く「脱炭素化」競争に転じる方が得策との計算がある。今回の合意では20年以降、毎年1000億ドル超の資金が途上国の温暖化対策事業などの支援に投じられることになっている。気候リスク投資家ネットワークのルーバー代表は「関連投資額は数十億ドルから数兆ドル単位に変わる。負担ではなくチャンスだ」と発想の転換を強調した。


     ■ことば

    国連気候変動枠組み条約

     地球温暖化防止のための多数国間条約。1992年の地球サミットで採択、94年に発効し、現在196カ国・地域が批准している。先進国、途上国の責任と役割を分け、先進国に率先して対策を取ることや、途上国に対する資金支援などを義務付けた。条約の下に具体的なルールを定めた「京都議定書」=97年の第3回締約国会議(COP3)で採択=がある。先進国だけに温室効果ガス排出削減を義務づけ、数値目標を設定した。議定書で目標を定めたのは2008〜12年と13〜20年で、20年以降の対策の枠組みは決まっていなかった。

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