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社説

軽減税率で与党合意 「欧州型」への第一歩に

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 消費税率を10%に引き上げる2017年4月から導入する軽減税率制度について、自民、公明両党がようやく合意した。税率を8%に据え置くのは、生鮮食品と飲料、菓子を含めた加工食品にまで広げた。

 何のための軽減税率か、消費税のあるべき姿は、との原点を考えた場合、生活必需品を広く対象とする欧州の例が参考になる、と私たちは主張してきた。今回の合意は、こうした「欧州型」の制度に近づける一歩になったと言える。だが、大事な議論と課題は積み残したままだ。

 欧州では、消費税にあたる付加価値税の税率が20%台の国が多い。

生活必需品広く検討を

 そして、ほとんどの国が当初から生活に欠かせない食品などに軽減税率を導入している。水道代や医薬、衣料、子ども用品、文化・教育関係などで、軽減税率やゼロ税率を適用する国も少なくない。

 こうした欧州にならえば、軽減税率の原点は「暮らしに深くかかわる品目への課税は低く抑える」という低所得者への配慮とともに、消費税を持続可能な税として定着させることにあると言える。

 わが国の消費税は、高齢化に伴って膨らみ続ける社会保障の貴重な財源である。10%への引き上げで賄えるとは思えず、段階的な引き上げが避けられそうにない。

 そう考えれば今後、痛税感を和らげる効果のある軽減税率を食品以外の生活必需品に広げるのは、消費税を浸透、定着させていくうえで不可欠だろう。与党はこの合意で終わらせず、議論を深めてほしい。

 また、与党間では新聞も対象にするよう調整しているという。欧州では書籍類も含め、「知識には課税しない」という考え方が定着しており、日本でもそれをふまえた制度設計が望ましい。

 ところで、軽減税率の対象が決まった結果、導入しない場合と比べ年約1兆円税収が少なくなり、埋め合わせる財源が必要になる。これまでの与党の議論では4000億円は確保できるという。残りの6000億円は導入まで1年以上あるとはいえ、宙に浮いている。

 協議の終盤で外食を対象に含めるかどうかでもめて時間を空費したが、本来は財源の議論にこそ時間を割くべきだった。「与党が責任をもって対処する」と言っても、心もとない。財源については、消費税の使い道である年金や医療などの社会保障費の中身を聖域化せず見直すことが欠かせない。

 たとえば医療分野での薬剤費の削減だ。新薬に比べて半額となる後発薬「ジェネリック」の使用を促したい。日本は後発薬シェアが4割台になったが、先進各国の7〜9割に比べ低い。20年度までに8割以上という政府目標が実現できれば、1兆円以上削減できるとも言われる。

 ただし、そもそも社会保障の財源として消費税収は一部にすぎず、「消費税が減収になるならば、その分は社会保障費を削って穴埋めしなくてはいけない」という論法にこだわりすぎるのはおかしい。他の税収をあてたり、社会保障以外の歳出を見直したりする道を探るべきだ。

 その場合、一時浮上した「たばこ税の増税」も一つの選択肢だろう。「1本1円の増税で1500億〜1700億円程度の財源を生む」との試算もある。17年度税制改正で検討しなくてはいけない課題だ。

益税を生む構造見直せ

 視点を変えると、消費者が払った税の一部が事業者の手元に残る「益税」を縮小させることも、結果的に財源確保につながる。軽減税率が定着している欧州各国では、事業者が正確に納税するため、税率と税額の明細を書いた「インボイス」をやりとりしている。日本でも、益税の余地を狭めて適正な納税を促すため、インボイスは不可欠な制度だ。

 今回、与党はインボイスの発行を事業者に義務付けることを決めた。ただ、導入は2段階とし、17年4月から4年間は経過措置として今の請求書に近い「簡易方式」で、厳密なやり方を義務付けるのは21年4月までずれ込む。

 問題は、中小企業への配慮が手厚い点にある。売上高が1000万円以下の企業に納税を免除する制度は存続し、税率が上がることで益税の額は膨らみそうだ。また売上高5000万円以下の企業には、「みなし」で納税額を決めればよい特例を設ける。10日間の販売実績を基にして売上高に占める軽減税率の品目の割合を推計し、1年分の納税額を計算するという。新たな益税を生みかねないどんぶり勘定ではないか。

 現状でも、「益税額は最大年間6000億円に上る」という試算があるほどだ。益税が拡大する方向に制度を変えるのではなく、縮小させるのが当たり前の対応だ。国民が払った消費税はきちんと国庫に納まり、社会保障の財源として将来に生かされなければならない。

 外食を除く食品全般が軽減税率の対象となる結果、線引きはわかりやすくなったと言える。企業の事務負担はさほど重くないはずだ。中小企業向けの優遇は廃止する方向を打ち出し、厳密な方式のインボイスの導入時期も早めるべきだろう。

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