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高橋 敏夫・評『ヨイ豊』梶よう子・著

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最後の浮世絵師たち 至福の思いが奔出

◆『ヨイ豊』梶よう子・著(講談社/税抜き1800円)

 最悪の事態こそ、最高の舞台だ。

 汚泥に深紅の花を咲かせ、漆黒の闇に一筋の光をみちびきいれる。起伏を糧とする物語が躍動し、暗いかがやきをはなつ、反転の瞬間である。が、これをつくりだすのはじつにむずかしい。文学的腕力はもとより、明確な思想、世界観が求められる。そして、くりかえしはきかない。

 梶よう子は本作品『ヨイ豊』で、そんな一回きりの実現をみごとにはたした。しかもその実現が、江戸最後の浮世絵師ともいうべき、四代目歌川豊国(清太郎)の苦難と悦(よろこ)びの生涯をふまえることで、作者みずからの「表現」へのつよい思いの表出となっている。

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