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井波律子・評 『いちまき−ある家老の娘の物語』=中野翠・著

 (新潮社・1512円)

家族の軌跡たどる臨場感

 「いちまき」とは血族の一団、一族の意だという。これは、映画や書物をテーマにした、軽やかな語り口の文章で知られる著者が、彼女の「いちまき」を周到に追跡し、みずからのルーツに光を当てた作品である。そもそも著者のいちまき探求の旅は、今を去ること二十二年、他界した父の遺品のなかに、安政六(一八五九)年に生まれ昭和十七(一九四二)年に没した、父方の曾祖母みわが著した自叙伝を発見したことに始まる。

 『大夢(たいむ) 中野みわ自叙伝』と題された、筆書きの自叙伝によれば、みわの実家は代々、関宿(せき…

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