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@大学紙面から

研究も開発も「食ブーム」 「近大マグロ」火付け役、学部新設も

東京ビッグサイトに初出展し、人気を集めた「大学は美味しい!!」のブース

 大学はいま「食ブーム」だ。大学ブランドの食品を開発したり、食関連の学部を新設したりと、硬軟織り交ぜ知名度アップに一役買っている。背景には、「近大マグロ」に象徴される近畿大の成功と、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や和食のユネスコ無形文化遺産登録といった「食のグローバル化」がある。

    農水省の展示会にずらり

     トマトスープ(日本大)、つけ麺(共愛学園前橋国際大)、梅酒(三重大)、エノキパイ(信州大)、ハチミツ(玉川大)、ライスミルク(筑波大)、ご当地どんぶり(千葉大)−−。

     東京ビッグサイト(東京都江東区)で11月中旬に開かれた農林水産省主催の展示会に、大学が開発した食品が並んだ。出品したのは、新宿高島屋(東京都渋谷区)で2008年から毎年開催されている「大学は美味(おい)しい!!」フェアで人気の7大学だ。

     NPO法人「プロジェクト88」が主催する同フェアは「大学発のブランド食品」を紹介するのが目的だ。近大マグロもかつて常連だったことで知られ、全国の大学から出展希望が絶えない。今年のフェアを林芳正農相(当時)が視察したことがきっかけで、同省が今回の出展を同法人に依頼した。

     同法人の高橋菜里理事長は「論文と違って、食品なら一口で成果が伝わります。ここで出合った大学に進学を決めた高校生もいるほどです」と、大学における「食効果」を実感している。

     フェアに出展する学部も、当初は農学部系ばかりだったのが、今は経営学部がケーキを手がけたり、工学部がジャムを開発したりと、文系理系を問わず多様化しているという。「好きな研究ではなく、社会に求められている研究をしなければ、これからの大学は生き残っていけません」。どの学部にとっても「食」は、消費者や企業のニーズを探る絶好の窓口になっていると、高橋理事長はみている。

    「いまこそ直球勝負」

     食の「本家」農学部も、食に対する安全意識の高まりや、就職先の多様さなどから注目を集めている。龍谷大は今年度、農学部を新設。国内で35年ぶりの農学部の設置となり、話題を呼んだ。

     「かつての農学部は農業の近代化、合理化が最大のテーマでした。その後、バイオテクノロジー系の名称に変更する大学が相次ぎましたが、いまこそ直球の農学部が求められています」と末原達郎学部長は言う。

     同大が掲げるのが「自然科学と社会科学をともに学べる農学部」だ。「どういう食べ物がどうやって人々の口に入るのかがいま、問われています。生産から販売、消費まで、食についてきちんと考えられる人材を育てたい」(末原学部長)。その目標実現のために、4学科中3学科で文系型入試も実施。初年度から定員(400人)の10倍を超える志願者を集めた。

     同大は「食と農の総合研究所」も農学部と同時に開設。おいしさを感じる味覚や匂いの分析や、和食の発展、啓発活動を目指している。

     一方、立命館大は社会科学の視点から食に挑む。2018年度に開設する食科学部(仮称)の狙いは「これからの世界と日本の経済を担う食の教育・研究」。同学部設置委員会事務局長を務める井澤裕司教授は「旧来の農学部系や家政学部系とは異なるグローバルなアプローチを展開します」と話す。

    どう分配するか、専門家育成

     「インターネット上の最大コンテンツは食です。同時に食は、エネルギーと並ぶ戦略物資でもあります」。食べたものを伝えるコミュニケーション力が、食産業を支える。どう生産するかよりも、どう分配するかの方が食料問題の根幹だ。「縦横に食を理解するエキスパートが世界的に求められているのに、日本の大学は応えてこなかった」と井澤教授は指摘する。

     新学部では、調理、栄養、衛生といった科学的知識に加え、歴史、地理、哲学など食に関する倫理観と文化的教養、ビジネス面での企画力、実行力を4年間で身に着ける。卒業後は食関連産業だけでなく、医療、ジャーナリズムなど幅広い分野での活躍を想定している。

     食のすべてを網羅する意気込みの同学部だが、「当初は『たかが食』が学問として成り立つか、という議論から始まった」と井澤教授は振り返る。食に関してはさらに「女性が学ぶもの」というジェンダー的要素も絡むという。「食と環境問題にいかに貢献できるかが大学の存亡を握っていることは、間違いありません」【上杉恵子】

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