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<記者の目>夫婦同姓 合憲判断=山本将克(東京社会部)

夫婦別姓を認めない規定は合憲と判断した最高裁大法廷の寺田逸郎裁判長(中央)ら=昨年12月16日、喜屋武真之介撮影

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最高裁 違憲の足がかり

 昨年12月、最高裁大法廷は、夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲とする初めての判断を示した。家族の姓がどうあるべきかは多くの国民が直接影響を受けるテーマで、高い関心が集まった。別姓を望む人たちから、結論に批判的な意見も多く耳にした。だが私は、最高裁が真正面から法律論としてこの問題を取り上げたことこそ、大きな一歩で意義深いと考えている。同29日のこの欄で、女性の同僚記者が国会での議論の深まりを強く求めた。家族の形が多様化しつつある戦後70年の節目に出した最高裁判決を、司法担当記者として角度を変えて読み解いてみたい。

    「社会問題」では権利侵害認めず

     後出しジャンケンになるが、合憲の予感はあった。昨年2月に大法廷に審理が移ってから判決までの間、司法関係者に取材を重ねると「違憲とするには時期尚早」との見方が圧倒的だったからだ。

     国民の生活に必要なルールは種々の法律で定められている。時代の変化と共にルールを改める必要が生じれば、国民の代表で構成される国会がその当否を議論して立法に当たる。この過程で、多数決の論理からこぼれ落ちた少数者の人権を守るため、憲法は裁判所に違憲立法審査権を与えた。だが、最高裁は立法府や行政府の裁量の幅を重く見て、この「伝家の宝刀」を遠慮がちに行使してきた。

     このため法律の規定を司法が違憲とするには、国民の権利侵害の程度が「見過ごせないほど大きい」と言い切れるだけの理屈が必要となる。あるベテラン裁判官は「ジェンダー論としては理解できるが、法律論としての説得力はどうか。同姓制度が社会に定着している現状では、規定に合理性がないと断じるのは難しいだろう」と推測していた。社会問題となるだけでは、ただちに違憲判断にはつながらないという指摘だった。

     1996年に国の法制審議会が、希望した夫婦が別姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」の導入を求めて19年。法改正の必要性は長く叫ばれていた。だが世論を二分するテーマで、最高裁がいきなり立法府に「レッドカード」を突きつけるのは、日本の違憲審査の在りようから言って考えにくかった。

     一方、最高裁が、女性だけに離婚後6カ月の再婚禁止期間を課した規定を違憲と訴えた訴訟の判決をセットにしたことが注目された。この訴訟で最高裁は「100日を超える期間は違憲」と同姓規定と逆の結論を導いた。こちらは既に、違憲だとの考え方が法律家の間で成熟しており、多くの司法関係者の予測も一致していた。再婚禁止規定は違憲として司法の存在感を示しつつ、賛否がより拮抗(きっこう)している同姓規定は合憲とする。2件をセットにしたのは、そんなバランス感覚が働いたからでは、との指摘もある。

    批判覚悟の上、世論関心高まる

     それでも、この合憲判断には価値があると私は思う。判決が、将来の違憲判断の足がかりになる可能性を秘めているからだ。

     今回の訴訟は、国会が立法を怠った「立法不作為」の違法性を問う形で起こされた。判例に従えば、正面からの憲法判断を避けて原告の敗訴とすることもできた。にもかかわらず最高裁は大法廷でこの問題を取り上げ、批判を覚悟の上で合憲判断を示した。家族の姓の現状に強い問題意識を持っているのは間違いない。

     判決は多岐にわたる原告の主張に一つずつ反論し、合憲判断を導いた。一方で、結婚の自由を定めた憲法24条の論点は重視し、改姓によってアイデンティティーの喪失感を持つ人がいることや、社会的な評価の維持が困難になることを指摘。「妻となる女性が不利益を受ける場合が多い」と、原告の主張に一定の理解を示した。少数意見に回った5人の裁判官も、いずれも憲法24条を理由に違憲とし、判断の鍵となった。将来、同じ裁判を起こす場合にはヒントになり得る。

     さらに「制度の在り方は国会で論ぜられるべきだ」と付言した。「今回は違憲とまでは言えないけれど、制度を取り巻く社会環境や世論が変われば、今後どうなるか分かりませんよ」と、国会に警告を発したと読むべきだろう。

     腰の重い国会に司法がげたを預けたことへの失望も聞く。しかし、最高裁が取り上げたことで家族の姓への関心が高まったのは前進だった。

     夫婦別姓の実現を真に望むのであれば、今後も粘り強く国会や司法に働きかけていくのが重要だと思う。別姓を選べない不合理への理解が今以上に広まり、それでも国会が放置し続ける状況になれば、最高裁がレッドカードを突きつける条件が整う。その時には、裁判官15人全員一致に近い形で違憲判断が出るに違いない。

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