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梯 久美子・評『殺人犯との対話』小野一光・著

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非人間的な行為は、人間にしか成しえない

◆『殺人犯との対話』小野一光・著(文藝春秋/税抜き1450円)

 ものすごく怖い本である。寝る前には読まない方がいい。高い確率で悪夢を見るからだ(経験済み)。

 『殺人犯との対話』は、日本国内で起きた10件の殺人事件を追ったドキュメンタリーである。殺人事件そのものの凄惨(せいさん)さもさることながら、殺し、殺されるという「非日常」が、実は私たちの日常のすぐ隣にあることが、リアリティーをもって迫ってくる。

 著者は10年以上にわたって全国を歩き、関係者の話を聞いてきた。10件の事件のうち5人の実行犯とは直接会っている。自分の娘と近所に住む男の子の2人を手にかけた秋田児童連続殺人事件の畠山鈴香については、逮捕前、報道陣の一人としての取材だったが、その他の4人とは、拘置所の面会室で対話を重ねている。それが本書の一番の読みどころで、殺人犯たちの肉声が生々しく伝わってくる。

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