DNA型の再鑑定に基づく強姦(ごうかん)事件の逆転無罪判決に、20年近く前の取材を思い出した。当時、関係学会がDNA型鑑定の指針作りを進めていた。そこに再鑑定の「保証」を盛り込もうとしたが、警察関係者が難色を示し「保証」から「配慮」に弱まったという話だ。
科学の世界では「第三者が後から検証できるか」が信頼性の鍵を握る。論文不正で「実験ノートの不備」が糾弾されるのもそのためだ。20年前に指針作りが気にかかったのも、信頼性確保の条件は、基礎科学でも捜査でも同じではないかと思ったからだ。
今回の事件はどうか。元の試料が残っていて、再鑑定できたこと自体は、当然とはいえ幸いだった。しかし、判決によれば、当初の鑑定に当たった鹿児島県警・科学捜査研究所は、試料から抽出したDNAが微量で「鑑定できない」とした上で、残りの溶液を廃棄していた。鑑定の記録は不明確で、手順や内容をたどれず、鑑定経過を書いたメモも捨ててしまった。
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