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余録

古代共和制ローマの政治家で雄弁家のキケロは…

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 古代共和制ローマの政治家で雄弁家のキケロは、近代の啓蒙(けいもう)思想家に民主主義を象徴する人物のようにあがめられた。ただしこの古代の共和制は、票や役職が半ば公然と売買される金権政治であった▲イタリアのジャーナリスト、モンタネッリの「ローマの歴史」によると、かのキケロも属州の役人になって今の6000万円に相当する私財を増やしている。だが当時の人々はその蓄財額が少ないとして彼を「清廉(せいれん)の士」と呼び、当人もそれを吹(ふい)聴(ちょう)して歩いたという▲キケロの執政官選挙では参謀の弟から「あらゆるつながりを動員せよ」と指南された。支持者には当選したら必ず報いると訴え、恩恵を与えた人には貸しを返せと迫る。貴族には大衆迎合を否定し、大衆には愛想よく振る舞った。なりふり構わぬ売り込みで当選した▲こんな故事を引いたのも、先日の甘利(あまり)明(あきら)氏の閣僚辞任記者会見で「いい人とだけつきあってては選挙に落ちる。来るものは拒まずじゃないと当選しない」との発言を聞いたからだ。自らが怪しげな金を受け取っておき、相手と選挙が悪いような物言いはいただけない▲小紙の世論調査で甘利氏の金銭問題について「説明は不十分」という人が6割を超えたのは当然だろう。だが首相の任命責任は「重くない」が「重い」を上回り、内閣支持率はむしろ上昇した。くり返される政治とカネによる閣僚辞任にはもう慣れっこということか▲共和制末期のローマの「清廉」を持ち出さずとも、「政治家なんてどだいそんなものだ」と見くびられては先行きが危うい。国民の政治不信も底が抜ける時があるのを政治家は心底恐れてほしい。

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