メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

その昔、人にとりついて迷い歩かせる「迷わし神」という怪異が…

[PR]

 その昔、人にとりついて迷い歩かせる「迷わし神」という怪異があるとされた。「宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)」には京の九条で迷わし神につかれて同じ場所をぐるぐる回るうちに日が暮れ、夜を明かす男の話がある▲迷わし神に遭いやすいのは町や村の境界あたりである。そこはまたこの世と異界との境界でもあって、人をたぶらかしたり、惑わせたりする怪しい神や霊が出没する。そう昔の人は考えたようである。もしかしたら人の一生にもそのような場所があるのかもしれない▲ではこの人はどんな所で迷わし神にとりつかれたのか。「清原和博(きよはらかずひろ)」の名の後に「容疑者」の呼称を見るのは、西武黄金時代の日本シリーズの興奮を心に焼きつけた世代にはただ悲しい。同じ失望はその打撃にあこがれた幸福な子ども時代をもつ方々も共にされよう▲近年はちょいワルの番長キャラで売った清原容疑者の覚醒剤所持事件である。だが年配の方ならばドラフトでの失意の涙や、巨人とのシリーズで日本一を目前にして流した若きスラッガーの涙が忘れられまい。歳月はその人を変えたのか、それとも変えなかったのか▲打者としての輝かしい実績の中には、サヨナラ安打、サヨナラ本塁打の通算日本記録もあった。野球の神様に愛されずには生まれなかった記録に違いない。だがグラウンドと俗世の境界に出没する迷わし神は、その人生を薬物の迷路に誘い込んでしまったようである▲かねて薬物疑惑が報じられながら逮捕にいたるとは、迷い込んだ闇の深さを物語る。ファンには人生の宝の一つだったその豪快な打撃の思い出を汚した罪は、やがて自ら悔いることになろう。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. コロナ対策「アドバイザリーボード」再開 「夜の街」呼称やめ「社交飲食店」に

  2. 首相と菅氏、吉村知事を厚遇「リーダーシップに敬意」 小池氏と対照的

  3. 「佐川さんには私の目を見て話をしてほしい」 近畿財務局職員の妻雅子さん

  4. 感染者と同席「コロナパーティー」 「無敵」と参加の30歳死亡 「間違いだった」言い残し

  5. 「死に追いやってしまった」「逮捕されるのが怖い」 木村花さん誹謗中傷 加害者の心情

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです