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幸せの学び

<その147> ゴリラは友だち=城島徹

間近で見たゴリラたち=2003年8月

 やはり申(さる)年だからだろうか。大型類人猿のゴリラ研究者で京大学長の山極寿一さんが年頭、多くの新聞や雑誌に登場してゴリラを友だちのように親しみをもって語っていた。山極さんが若き日々にフィールドワークで過ごしたアフリカの熱帯雨林の山中は私も訪れたことがあり、そこで出会ったマウンテンゴリラは本当に「仲間」のように感じたものだ。

     信濃毎日新聞の元日紙面で山極さんはゴリラ研究の意義を「人間の家族や社会の原初の姿が見いだせるのでは、と思っています」と語り、日本子守唄協会の「ららばい通信」新春号に収録された講演「子守唄の起源−ゴリラから学ぶ−」では人間の共感能力が音楽によって鍛えられたとの分析を示していた。

     また、ゴリラの顔のアップを表紙にした、ホームレスの人たちの自立を支援する雑誌「ビッグイシュー日本版」元日発行号ではゴリラ研究から見える人間社会について語ったインタビューが掲載され、若き日のゴリラとの出会いが興味深かった。

     山極さんはゴリラ研究を始めて3年目の1980年12月、世界のマウンテンゴリラの約半数が生息しているルワンダのビルンガ火山群の山中に入った。米動物学者ダイアン・フォッシーさんが設立した「カリソケ研究所」でマウンテンゴリラの調査を始めたのだ。

     山中で藪をかき分けると、目の前に巨体のオスが現れたという。「このオスが私をじっと見て、『グフーム』とあいさつをしたんです。そしたら、魔法が解かれたようにメスも子どもたちも動き出しました」。そんな対面シーンが語られていた。

     現地で指導を仰いだフォッシーさんの長年に及ぶ調査、保護活動は映画「愛は霧のかなたに」(邦題)で世界に紹介されたが、密猟者を糾弾した彼女は85年に何者かに殺された。ルワンダでは94年の大虐殺や内戦でマウンテンゴリラも子どもがペット用に捕獲され、ツアー客の激減で保護活動に資金が回らないなど受難が続いた。

     私が訪れたのは治安が回復に向かう2003年だった。「じっとしていれば大丈夫。ゴリラは友だちだよ」とガイドに声を掛けられ、マウンテンゴリラの暮らす山腹を目指した。そして感動の“出会い”を記事にこう書いた。《緑の樹林が揺れ、黒い毛のゴリラが現れた。意外なほどおとなしく、群れで暮らす十数頭が3メートル先まで寄ってきた》

     無邪気に寝っころがる姿やオスのリーダーの悠然とした顔を見ていると、まるで彼らが「僕らは同じ地球の仲間ですよ」と語りかけているかのように思えたのだ。【城島徹】

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