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陣野 俊史・評『ヘッドフォン・ガール』高橋健太郎・著

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時代のかけらを集めて見事に奏でられた物語

◆『ヘッドフォン・ガール』高橋健太郎・著(アルテスパブリッシング/税抜き1600円)

 音楽評論家・高橋健太郎、初の小説。主人公のカズは、行方不明になった伯母の家で、古い映写機に触れるうち、タイムスリップしてしまう。それだけではない。どうやらそこは地下鉄で、ヘッドフォンで音楽を聴いている若い女性の体に入りこんでしまったようなのだ……。

 よくある近未来小説? いや、断じて違う。近未来への時空間の移動は、小説にとって大きな問題じゃない。伯母の教え子のリキがヴァイオリン奏者であること、ドイツの伝説的ミュージシャンのジーモンとカズの祖父が残した戦前のリボン・マイク、ベヒシュタインのピアノ……それらが重層的に絡まり合い、最後には一本の糸へと縒(よ)り合わされる。著者は一見バラバラに散らばったさまざまな事象を見事な手つきで、ひとつの作品へ…

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