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今週の本棚

鴻巣友季子・評 『闇の河』=ケイト・グレンヴィル・著

 (現代企画室・2700円)

書き継がれる三つめの国家神話

 原題はThe Secret River。「オーストラリアの歴史には密やかな(シークレット)血の河が流れている」という人類学者W・H・スタナーの言葉から、この題名と作品が生まれたという。

 十八世紀末、ロンドンの最貧層に生まれたウィリアム・ソーンヒルは、食べるために軽犯罪を繰り返す。その成り行きや街の情景はディケンズを彷彿(ほうふつ)させるが、「茨(いばら)の丘(Thornhill)」という名をもつ彼は、さながら『天路歴程』の「クリスチャン」のごとく、あらゆる苦難と誘惑に出会う。十三で孤児となり、十四で船頭業につき、二十一で師匠の娘と結婚、と一度は上り調子の人生に転ずるものの、再び窃盗を犯し、シドニーへの終身流刑が決まる。

 開拓村に着いた一家三人は、丘の上の小屋をあてがわれ、三年が経(た)つころには豊かな食卓を囲むまでに…

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