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橋爪大三郎・評 『村上春樹は、むずかしい』=加藤典洋・著

 (岩波新書・864円)

 本格的な批評の書である。村上春樹の長編も短編も博物館の陳列のように、ラベルを貼って並べて解明される。私が作者本人なら生きた心地もしない。

 デビュー作『風の歌を聴け』は日本文学で初めて《自覚的に「肯定的なことを肯定する」作品》である。誰もが否定性に浸って近代の物語を紡いでいたとき、気持ちよくてなにが悪い、と言ってのけたのだ。

 ポップなこの身軽さは、現実から距離を置く「デタッチメント」とみなされた。話はそう簡単でない、初期短編三部作をみよ、と加藤氏は言う。「中国行きのスロウ・ボート」は戦争の罪責感、「貧乏な叔母さんの話」はプロレタリア、「ニューヨーク炭鉱の悲劇」は内ゲバの死者を暗示している。ポストモダンな状況のなかで、かつての否定性をどう引き受けるかという、新しい課題との格闘なのだ。

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