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社説

大震災から5年 子供の心のケア 見えない傷に寄り添う

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 被災地の子らの笑顔に希望を感じる人は多いだろう。しかし、心に深い傷を負いながらSOSを言えず、時が過ぎてから苦しみ出す子供たちがいる。震災から5年、復興が少しずつ進み、人々の関心が薄れていくこれからが、子供のケアは本番だ。

 笑顔を見せ、周囲には気丈に振る舞っても、誰にも悩みを言えない子がいる。東日本大震災で親を亡くした遺児は1700人を超える。友だちを亡くし、住み慣れた家を津波で流された子はさらに多い。

 被災直後は必死にがんばってきたが、時間がたつにつれて気持ちが落ち込み、食欲をなくしてボーッとしたり、感情が不安定になったりする。阪神大震災では3〜4年後にピークを迎えたとの指摘もある。心に深い傷を残すトラウマを放置しておくと症状が悪化し長期的なうつやひきこもりにつながるケースもある。

 あしなが育英会では遺児のケアをする施設を宮城県と岩手県に計3カ所開設した。週末や夏休みに子供たちが集まり、安心して弱音を吐ける仲間づくりをしている。がれきの処理や建物の再建に比べて、子供の心の問題は見えにくく後回しにされがちだが、国や自治体の公的支援がもっと必要ではないか。

 仮設住宅でのストレス、親の生活困窮も子供たちに深刻な影を落としている。震災当時に保育園児だった子の4人に1人が心の問題で医療的なケアが必要との調査がある。

 特に、原発事故の影響で県内外での避難生活を強いられている福島県の子供たちは複雑だ。もともと福島県は不登校が最も少ない地域の一つだが、震災後は増加傾向をたどっている。心のケアセンターは県内各地にあるものの、アルコール依存やギャンブル依存になった大人の対応に追われ、子供には手が回らないところが多いという。

 福島大学は医師や心理士を学校や仮設住宅に派遣して「心の教育プログラム」を実施している。子供が見せる症状は似ていても原因はそれぞれ違う。「被災のトラウマ、ストレスや親の不適切な養育の影響、もともと子供が持っている発達障害など、個々に応じたケアが必要だが、専門家によるチーム医療ができる体制にない」と医師は指摘する。

 最近は震災後に生まれた子供が保育園で不適応を起こしている例も増えている。親の不安定な精神状態や避難生活が影響しているとみられる。適切なケアが受けられないまま小学校に上がると、さらに集団適応が難しくなり深刻な問題行動が生じる恐れがある。長期にわたる継続的なケアが不可欠なのだ。

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