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時代の風

ゴリラから教わったこと=京都大学長・山極寿一

=小松雄介撮影

 連載も最後になったので、ひとつ言い残しておこうと思う。それは時間の使い方である。

 今、私たちは経済的な時間を生きている。そして、自分が自由に使える時間をほしがっている。しかし、自分の時間とはいったいどういう状態のことを言うのだろう。それをどう過ごしたら、幸せな気分になれるのだろうか。

 どこの世界でも、人は時間に追われて生活している。私がゴリラを追って分け入ったアフリカの森でもそうだ。晩に食べる食料を集めに森に出かけ、明後日に飲む酒を今日仕込む。昨日農作業を手伝ってもらったので、明日ヤギをつぶした際に取り分けて返そうとする。それは、つきつめて考えれば、人間が使う時間が必ず他者とつながっているからである。時間は自分だけで使えない。ともに生きている仲間の時間と速度を合わせ、どこかで重なり合わせなければならない。だから、森の外から流入する物資や人の動きに左右されてしまう。

 ゴリラといっしょに暮らしてみて私が教わったことは、互いの存在を認め合っている時間の大切さである。野生のゴリラは長い間人間に追い立てられてきたので、私たちに強い敵意をもっている。しかし、辛抱強く接近すれば、いつかは敵意を解き、いっしょにいることを許してくれる。それは、ともにいる時間が経過するに従い信頼関係が増すからである。ゴリラたち自身も、信頼できる仲間といっしょに暮らすことを好む。食物や繁殖相手…

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