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SUNDAY LIBRARY

INTERVIEW 長岡弘樹 『教場2』

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向いてなくてもしがみつく崖っぷちでの強さ

◆『教場2』長岡弘樹・著(小学館/税抜き1500円)

 法学、語学、礼儀作法、武道と、プロを目指して半年間鍛え上げられる全寮制の学校−そこが警察学校だ。鬼教官へのほのかな恋あり、同級生の持ち物がなくなるというミステリーにおなじみの展開あり。やや毛色の変わった学園ミステリーか、と思うことなかれ。警察学校での成績が卒業後の昇進や昇給にも関わってくるシビアな世界。仲間でありながら競い合うことの厳しさを描いた、リアルな警察小説ともいえる。

「警察学校を舞台にしたのは、警察小説を調べていて、警察学校がまだ書かれていなかったからです。それから卒業したばかりの20代の方に会い、授業や寮を見せていただきました。取材時の印象は、『意外と普通の若者』です。そこから親しみを持って書けるようになりました」

 日記を毎日提出し、誤字脱字が見つかれば腕立て伏せ20回。被疑者を吐かせるコツは「よい警官」と「悪い警官」がアメ役とムチ役になって攻めていくこと。本当に?と驚くようなことと、なるほどと感心することが交互に立ち現れる。そんな興味深いエピソードをちりばめながら、前職が警備員だったり医者だったりする、ひと癖もふた癖もある訓練生たちが描かれる。癖のある訓練生を束ねていくのは、これまたとんでもない過去を秘めていそうな鬼教官・風間公親だ。1作目が出たときには、警察小説には珍しく女性のファンが急増。「風間にあこがれる」という声が多かったが、意外にも長岡さんの中では、「教官は狂言回し。主役はやはり学生」だそう。

 一話ごとに語り手の学生が入れ代わり立ち代わりする、連作短編の形式を取っている。

「書いていて乗れるのは、いかにも警官に向いているタイプではなく、向いてないのにしがみついている人物。僕も20代の頃は、読書好きというわけでもなかったし、小説を書くなんて向いてないなとずっと思っていました。それでも、大学生になってから読み始めた小説の真似(まね)がやめられなかった。逢坂剛さん、船戸与一さん、横山秀夫さん……横山さんのように書けたら本当に素晴らしい。けれど投稿して落ちるならともかく、そもそも投稿できなかった(笑)。書きかけてはやめていたんです。やめようかなどうしようかなと迷いながら書き続けていました」

 迷走を続けながら過ごした20代は訓練生たちの姿にも重なる。例えば第4話では、子供の頃からきれいでちやほやされてきた訓練生が登場。彼女のようなタイプがあまりぱっとしない同性を見下すのは、まあ、人間なら当たり前のこと。しかし、警察官になるに当たってはそんな可愛らしいエゴも許されない。退校ぎりぎりまで追い詰めていく風間教官がお見事だ。生徒もわかっているから歯を食いしばる。ここまでストイックな小説がヒットし、本屋大賞にも選ばれるというのは、清々(すがすが)しいまでの厳しさを現代人が求め、嘘(うそ)の許されないユートピアを本書に見ているからではないかと思う。

「ただの謎解きに終わらないよう、編集者と話し合っています。崖っぷちまで追い詰められた人間の強さを見てください」

(構成・柴崎あづさ)

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ながおか・ひろき

 1969年、山形県生まれ。2003年に「真夏の車輪」で第25回小説推理新人賞、08年に『傍聞き』(双葉社)で第61回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。本作は「このミステリーがすごい!2014」の2位に選ばれた『教場』の続編

<サンデー毎日 2016年4月10日増大号より>

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