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社説

川内原発仮処分 疑問が残る高裁の判断

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 昨年再稼働した九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)について地元住民らが運転差し止めの仮処分を求めた即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は、住民側の申し立てを棄却する決定を下した。

 福島第1原発事故後に原子力規制委員会が策定した原発の新規制基準に不合理な点はないとして、昨年4月の鹿児島地裁決定を支持し、川内原発の再稼働を改めて容認した。

 だが、過酷事故に備えた住民の避難計画や火山対策に対する同支部の判断には疑問が残る。

 同支部は、原発事故のリスクはゼロにできないため、「原発が確保すべき安全性は社会通念を基準として判断する」との考えを示した。その上で、争点となっていた(1)原発の耐震安全性(2)火山対策(3)自治体の住民避難計画−−について評価し、住民らが重大な被害を受ける具体的危険は存在しないと結論づけた。

 福島第1原発事故で原発の安全神話は崩れた。事故の発生を前提に対策を講じることは、当然である。

 だからこそ、事故時の避難計画が重要となる。避難計画の策定は自治体の義務だが、新規制基準に基づく規制委の安全審査の対象ではない。計画に実効性を持たせるには、避難計画も審査対象とすべきだ。

 ところが同支部は、避難計画が実効性を欠いても、電力会社が原発を運転することで、直ちに住民の生命や身体に被害を及ぼす恐れがあるとはいえないとした。避難計画が新規制基準の対象外なのは立法政策の問題で、不合理ではないという。

 避難計画が不十分でも、原発の再稼働を認めることが社会通念にかなうのか。関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働を巡っては先月、大津地裁が運転停止の仮処分を決定した。「避難計画をも視野に入れた規制基準の策定は国の信義則上の義務」と指摘している。こちらの方が、常識的な考え方だろう。

 原発周辺の火山の影響について同支部は、規制委が噴火の時期や規模が予想できることを前提にしている点は不合理だと批判した。

 その一方で、住民側が主張する巨大噴火の危険性については「建築規制をはじめ考慮されていないのが実情」であり、無視しうるとするのが社会通念だとした。

 だが、事故が起きれば広く国土に影響が及びかねない原発と、一般の建築物を同列に扱うことに、疑問を感じる国民も多いことだろう。

 司法の判断は分かれており、原発のリスクを巡る社会通念はまだ固まっていないことは明らかだ。

 政府や電力会社は国民の不安を受け止め、丁寧な議論を深めていく必要がある。

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