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アートの地平から

アーツ前橋館長、住友文彦さんのコラムです。

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アーカイブの潜在力=住友文彦

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アーツ前橋館長・住友文彦さん=アーツ前橋提供
アーツ前橋館長・住友文彦さん=アーツ前橋提供

 新しい年度の初めは、同じ学芸員の仕事をしている方から異動や引退の連絡が届く。担当された展覧会や書いた文章を懐かしく振り返りつつ、つい段ボール箱に詰め込まれた資料の山を思う。こんな比較が成り立つか分からないが、会社員や研究者は資料を集め業務が終われば整理が可能なのに対し、学芸員の手元には全うする目的と関係ない資料が大量に残る。それは作家やその遺族など人付き合いの多さや、そもそも一次資料といわれるものを好む習性が要因だ。これは引っ越しの面倒や整理のうまい下手の言い訳も含みつつ、それを超える問題とも関係する。

 たとえば国立公文書館の収容スペース問題を見ていると、この国は資料を保存し後世に伝える意識に乏しい。いっぽうで、米国の美術館ではアーカイブ担当者が読めない日本語で書かれた資料まで保存し、機会があれば日本の美術関係者に尋ね調査を行う。外交でも文化でも、彼らは過去を知ることが力になることを知っている。時々の判断とは別の、そこで光が当たらなかったもの、場合によっては間違いまで検証することが大きな財産を生…

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