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武田 砂鉄・評『かなわない』植本一子・著

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猛烈に情けなくても自分を放棄しない

◆『かなわない』植本一子・著(タバブックス/税抜き1700円)

 私たちは「あの人よりマシ」という状態がどうしても大好きで、それは「あんな家庭よりマシ」や「あんな会社よりマシ」や「あんな国よりマシ」などにじわじわ膨らんでいく。比較して、自分の存在がどうやら上位に保たれると分かった時の安堵(あんど)が生み出す平和なんて絶対的にインチキなのだが、粗雑な比較は粗雑な自己肯定にはなるし、毎日を歩む潤滑油としてそれなりに機能してしまう。そんな繰り返しを「それって情けなくないか」とその都度思い直すことって、実はけっこう難しい。

 植本一子(うえもといちこ)『かなわない』を読みながら、何度か、この家庭よりも自分のところはちゃんとしてるなと思い、そんな吐露に気づく度に猛烈に情けなくなった。でもそう思ったことなどすぐに忘れ、また同じように、マシだなとか思う。で、また、情けなくなる。その繰り返し。

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