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社説

長時間労働 改善は賃金とセットで

 安倍晋三首相は1億総活躍国民会議で長時間労働の是正を指示した。これを受けて厚生労働省は労働基準監督署が立ち入り調査に入る目安である1カ月の残業時間を100時間から80時間へ引き下げた。

     違法な長時間労働にメスを入れるのは当然だが、多くの企業で残業が常態化している背景にも目を向けよう。残業代がないと生活できない賃金水準の改善とセットで残業をなくす雇用環境を作っていくべきだ。

     すき家、ワタミなど低価格競争にしのぎを削るサービス産業を中心に、長時間労働は何度も問題になってきた。厚労省が今月発表した調査結果でも8530の職場のうち半数を超える4790カ所で違法な時間外労働が確認された。同省は「過重労働撲滅特別対策班」を設け、全国47の労働局に新設の「過重労働特別監督監理官」を配置し、取り締まり強化に乗り出した。

     労働基準法は1週間の勤務時間を40時間と定めているが、労使協定を結べば延長が認められ、特別条項付き協定でさらに延ばすことができる。多くの企業で残業が常態化しているのはそのためだ。

     日本の正社員は先進諸国の中で長時間労働をしている割合が突出して多い。連合は以前から改善を主張しているが、現場の労働者は必ずしも賛同しているわけではない。多くの企業で従業員に課される業務量は残業が前提で、従業員が得る賃金は残業代を含めなければ生活費が賄えない水準だからだ。

     残業をせず、かつ生活できる賃金を確保するには、経営者も労働者も生産性を高める努力が必要だ。内部留保の多い企業は収益を労働者への分配に回し、政府も最低賃金を大胆に上げないといけない。容易なことではないが、長時間労働をしないことを基本に、賃金や事業内容を見直していくべきである。

     第1子が生まれた後も仕事を継続する女性は5割しかいないとも言われる。残業の常態化が、子育てしながら女性が働き続けることを難しくし、夫の育児時間や育休取得率も低い水準にとどめているのだ。

     親の介護をしながら働き続けることも同様に難しく、年間10万人ともいわれる介護離職者を生んでいる。2025年には団塊世代が全員75歳に達し、要介護度が高まってくる。介護施設や地域の介護サービスの不足は目に見えており、このままでは親の介護のために離職せざるを得ない人がますます増えるだろう。

     「1億総活躍社会」を実現するためには、子育てや介護と両立できる働き方に切り替えねばならない。長時間労働の解消は、1億総活躍のかなめの政策である。

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