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三浦雅士・評 『僕の名はアラム』/『アルメニア人の歴史』

 ◆『僕の名はアラム』 ウィリアム・サローヤン著、柴田元幸訳

 (新潮文庫・562円)

 ◆『アルメニア人の歴史』 ジョージ・ブルヌティアン著、小牧昌平監訳、渡辺大作訳

 (藤原書店・9504円)

サローヤンとアルメニア人の運命

 柴田元幸編『マーク・トウェイン』(集英社文庫ヘリテージシリーズ)の、とりわけ「ハックルベリー・フィンの冒険 抄」の柴田訳(ほとんど平仮名!)に度肝を抜かれていたら、続いて同じ訳者によるサローヤンの『僕の名はアラム』の新訳が出て、訳文に釣られてつい読み通してしまった。数十年ぶりの再読だが名作である。アラム・ガログラニアンという作者を思わせる語り手の、一九一五年から二五年にかけての、つまり七歳から十七歳にかけての、カリフォルニア州フレズノで過ごした日々がつづられているのだが、以前はそれほどにも思っていなかった「サローヤンはアルメニア移民の子である」という事実が強く迫ってきた。

 「僕たちは貧しかった。一文無しだった。一族全体が貧困にあえいでいた。ガログラニアン家は世界でもっとも驚異的かつ喜劇的な貧困の中で生きていた」「その日の午後、おじのホスローヴがコーヒーと煙草を味わいにわが家へやって来た。客間に座って、ちびちび飲み、喫(す)いながらおじは旧世界を回想した。やがてもう一人客が来た。ジョン・バイロという農夫で、寂しいのでアルメニア語を覚えたアッシリア人である」

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