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SUNDAY LIBRARY

著者インタビュー 酒井順子 『子の無い人生』

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見方を変えれば、孤独死は理想の「ぽっくり死」かも

◆『子の無い人生』酒井順子・著(KADOKAWA/税抜き1300円)

 『負け犬の遠吠え』から12年。どんなに美人でキャリアがあっても、30代で未婚は「負け犬」です−女性自身が薄々気づいていた現象をあっさり書き、当の女性たちを泣き笑いさせた酒井さんが次段階に踏み込んだ。その名も「子の無い人生」。母親が亡くなり、仏壇の位牌を毎日世話しているうち、「そういえば、子の無い私の看取(みと)りは誰が?」とハタと思ったのがきっかけだったという。

「姪(めい)はいるのですが、母親の妹というだけの3親等の叔母さんが『後はお願いね、お墓の面倒もみてねー』と押しつけるのはあまりにかわいそう。それに、今回の取材でわかったことですが、未婚の女性は災厄をもたらすとして、実家の墓に入れない地方もあるんです」

 ではどうすれば? というわけで沖縄にも出かけた。あの世で結婚するという面白い民俗学的解決法が取られている。それやこれや、墓に入れない子無し族、兄弟のいない子無し族、産めなかった子無し族、酒井さんのように、産みたいとも産みたくないとも渇望しなかった「なんとなく子無し族」−そうしたさまざまな「族」の人たちの事情や戸惑いを一話ごとにまとめたのが本書だ。周辺に取材するうち、「締め切り前にネタが浮かんだ」とか。つまりは登場するのは普通の人たち。働く女性は働く女性だけ、ママ友はママ友だけのネットワークをつくりがちなことはご存じだろうか。そうした中にあって男性の子無し族含めて多角的に紹介されている本書では、実は互いが互いをどんなに気遣っていたかがわかる。子ありの人は子ども自慢をしないように、子無しの人は子育ての大変さを思いやれるように。いっとき、専業主婦対キャリアウーマンの対立構造が話題になったが、少子高齢化が進みつつある日本はもはやいがみあっている暇はなく、子無し・ありを超えて助け合う時にきているのかもしれない。

「本書がそうやって理解が進むきっかけになればうれしい。また、少子化というと、どうしても女性の問題と取られがちですが、女性だけ産む気満々でも、男性の協力なり愛情なり性欲がなければ子は生まれないもの。少子化だから女性は頑張ってほしい、という今の風潮は疑問です」

 そもそも「正式に婚姻届を出した夫婦」のみが正しいとされてきたことが今の少子化を招いてしまったという側面もある。未婚の母も事実婚も、レズもゲイも養子もアリという欧米を真似(まね)することまでは無理だろうが、本書を読むと、「正しい」こと以外は認めないという堅さがほぐれていくのを感ずるのだ。

「今は孤独死が可哀そうで問題、ということになっていますが、実は病院にもかからずふっと亡くなるって憧れのぽっくり死ですよね。生き方にいろいろあっていいように死に方もいろいろあっていい。子どもに看取られてお墓に入り、お彼岸のたび墓参りしてもらうだけが幸せってわけでもないと思うんです」

 孤独死もまたひとつの生き方。今、私たちは日本ならではのさまざまな生き方をつくっている途上であり、酒井さん流に言えば、「壮大な実験の途中」なのだ。

(構成・柴崎あづさ)

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酒井順子(さかい・じゅんこ)

 1966年、東京都生まれ。高校時代より雑誌にコラムを執筆。立教大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆に専念。2004年『負け犬の遠吠え』で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。著書、共著多数

<サンデー毎日 2016年5月1日号より>

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