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社説

保育所と住民 子供の声は騒音なのか

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 匿名ブログをきっかけに待機児童の解消が重要課題となっている。その一方で、「子供の声がうるさい」など周辺住民からの反対で保育所の開設を断念する例が相次いでいる。毎日新聞の全国調査では、2012年度以降だけで開設を断念した事例が11件、開設が遅れたケースも15件あることが分かった。

 「静かな住環境を守りたい」という住民の気持ちはわかるが、未来を担う子供は社会の宝だ。次世代の人口が減少すると年金や介護など老後の暮らしを支える制度も危うくなる。なんとか折り合いをつけて、地域で子供を育てる環境を作りたい。

 千葉県市川市では4月に開設予定の保育所が住民らの反対で建設中止に追い込まれた。子供の声だけでなく、送迎の車による渋滞、交通事故のリスク、親たちのマナーにも批判は向けられる。

 多世代同居が普通だった時代と異なり、核家族で夫婦共働きが多くなった現在、一戸建てが多い住宅街では昼間、子供の声があまり聞かれなくなった。そうした地域に保育所を作ろうとすると、住民たちから反対されることがある。

 厚生労働省の15年調査では、子供の声を「騒音」と思う人が約35%に上った。地域活動に参加していない人ほど「騒音」と感じる割合が高い。家族や地域付き合いの変化が、子供の声を疎ましく思う人々の増加に影響しているのだ。

 保育所建設の計画段階から住民説明会を丁寧に行い、防音ガラスや壁の設置に取り組み、住民に納得してもらっている自治体もある。反対運動が起きている地域では、自治体の事前説明が不十分だとして住民らが不信を募らせるケースが目立つ。

 保育は、行政がサービス支給の決定や調整の権限を一手に握っていた「措置制度」から、利用者の意向を重視する制度へ転換した。利用者にとっては選択権が広がったが、その一方で行政の責任が後退し、調整能力も弱くなっているのではないか。子供を保育所に預けなければ働けない親と周辺住民の主張がぶつかり、当事者間での解決が難しいからこそ、利害調整をする行政の役割が重要なのだ。

 高齢世代が子供の声に不寛容だというわけではない。厚労省の調査では、むしろ年齢が高くなるほど子供の声を「騒音」と思わない割合が多い。反対運動も一部の人が声高に反対しているだけで、何となく引きずられて同調している人の方が多いと言われる。

 子供たちの声を「騒音」と決めつけて受け入れないことに心を痛めている人は多いはずなのだ。これからの時代を背負う子供たちである。優しく見守る地域社会を育てたい。

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