(インスクリプト・2916円)
この二月に亡くなられた津島佑子さんの遺著となるエッセイ集である。全体は四部からなり、第一部では東日本大震災と原発事故に触発された一連の思索が、第二部では近年の小説の舞台ともなった新疆ウイグルや湘西など、大陸への旅と考察が、第三部はぐっと文学的な深度を深めた異界と物語についての言葉が、最後の第四部では、前三部を横断していく短めの文章が収められている。
主題はみな、有機的に結びついている。小説世界で展開されていた叙事のダイナミクスを抑えながらも力のある表現でつづられた言葉は、読者の想像力に委ねるというより、想像力を発動させる種を蒔(ま)くためのものだ。著者がもうこの世にいないことを知っている読者が手に取れば、あちこちで親しい人々の死に言及されていることをつい意識してしまうのだが、本書のおおもとにあるのは、「死」ではなく「生」への、「いのち」への…
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