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磯田道史・評 『原節子の真実』=石井妙子・著

 (新潮社・1728円)

自らを語らぬ美しい最後の未踏峰

 原節子について、自分が、いかに誤解に満ちていたか、本書で思い知らされた。ノンフィクションは登山に似ている。もっとも書くのが難しいのは、自らを語らない謎めいた孤高の人物である。しかし、そのようなエベレストのような美しい独立峰のような人物ほど、その美しさを見極めたい衝動にかられる。ノンフィクション作家にとって最後の未踏峰のごとき人物は、原節子に他ならない。著者は、彼女の最晩年に、その評伝を書き上げようと、3年間をかけて、決して、その姿をみせようとしない原節子すなわち本名・会田昌江(あいだまさえ)の隠宅に花束をもって毎年誕生日の訪問をはじめる。

 本書は、冒頭から、目からウロコの連続である。横浜の生家は生糸問屋ではじめは裕福。姉二人はフェリスに二等列車(今のグリーン車)で通う。だが母や姉が心体を病み、家庭には翳(かげ)があった。原節子は幼時、学校の成績もトップ。ところが、横浜第一高女の受験当日、高熱を発し、まさかの不合格。私学に通わざるをえなくなった。そのタイミングで、生家が傾き、学費の支払いが難しく、映画監督・熊谷久虎(ひさとら)に嫁し…

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