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社説

米大統領広島へ 訪問の英断を評価する

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 広島、長崎への原爆投下から70年余り。日本人が待ち続けた訪問である。オバマ米大統領が主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に出席後の27日に広島を訪問することが決まった。米大統領の初の被爆地訪問には安倍晋三首相も同行する。

     まずはオバマ大統領の英断を歓迎したい。2009年に「核兵器のない世界」を提唱してノーベル平和賞を受けた同大統領にとっても被爆地訪問のハードルは高かった。米国内では原爆投下が終戦を早め、50万人とも100万人ともされる人々の命を救ったとの見方が根強いからだ。

     しかし、先月広島で主要7カ国(G7)外相会合が開かれた際、ケリー米国務長官ら核保有国の外相が初めて原爆資料館を訪れ、犠牲者への献花も行ったが、米国内では強い反発は見られなかった。むしろ米主要紙は、オバマ大統領の広島訪問を促す社説を掲げた。風向きが変わったのである。

     その理由の一つとして、北朝鮮の核開発が米国にも脅威を与えていることが挙げられよう。被爆地訪問が北朝鮮の党大会に合わせるように発表された背景には、東アジアの不穏な情勢を見据えた日米の計算もあっただろう。日米首脳による広島訪問が北朝鮮情勢にも好ましい影響を与えるよう期待したい。

     また、ケリー氏の広島訪問時は被爆者との対話の場がなく、日本側には不満が残ったとされる。オバマ大統領はぜひ被爆者の代表らの話を率直に聞いてほしい。米側には「大統領が原爆投下を謝罪すべきではない」との声もあるが、被爆者らが求めるのは謝罪の言葉というより、同じ人間として核兵器の恐ろしさを共感することではなかろうか。

     私たちはオバマ大統領の「核なき世界」演説以来、大統領の被爆地訪問を呼びかけてきた。核兵器のない世界は容易には実現しまい。だが、その長い旅は、恐ろしい兵器の犠牲になった人々への鎮魂から始まると私たちは信じるからだ。

     米国では大統領選の候補者選びが大詰めを迎えている。共和党の候補者に事実上決まった実業家のトランプ氏は、大統領の広島訪問を民主党批判に利用するかもしれない。だが、世界を見渡せば核の脅威が膨らむ一方、核軍縮の動きはあまりにも鈍い。

     核削減の柱である核拡散防止条約(NPT)の5年ごとの再検討会議は昨年、核兵器を持つ国と持たない国の対立から決裂した。ロシアのプーチン大統領はウクライナ情勢に関して核兵器の準備にも言及した。世界は危うい状況にある。大統領の広島訪問を政治的に利用するようでは了見が狭い。人類の危機を再認識する貴重な機会とすべきである。

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