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介護のとき

3 人の輪に支えられてこそ

千葉市の「訪問レッスン」は、高齢者を在宅介護する家族の悩みに実地でアドバイスする=池乗有衣撮影
入浴の一連の動きを見て、転倒防止用の手すりの位置などを確認した=池乗有衣撮影

 背中にも額にも、じっとり脂汗がにじんできた。とにかく重い。居間で尻餅をつき、起き上がれなくなった夫。帯を体に巻いて引っ張ってみたが、起こせない。

 「お父さん、どうにか動けない?」。体が不自由なのは分かっているのについ、きつい言葉をかけてしまった。最後は毛布の上に乗せて引きずり、ベッドになんとか引き上げた。

実地でアドバイス

 千葉市に住む木村芙佐子さん(76)は夫の茂夫さん(79)を介護している。茂夫さんは膝が痛み歩行困難になる「変形性膝(しつ)関節症」をきっかけに、足がもつれて転ぶようになった。昨年6月には頸椎(けいつい)と腰椎(ようつい)を圧迫骨折した。右足が曲がらないうえ左手も自由がきかず「起き上がり方が分からなくなった」という。

 夫婦2人暮らし。「できるだけ自分の力で過ごしたい」という夫の思いを尊重し、芙佐子さんはホームヘルパーの手を借りずに面倒を見る。

 自宅で心地よく過ごしてもらうため今年3月、市の家族介護者支援事業「訪問レッスン」を申し込んだ。経験豊かなヘルパーらが自宅まで足を運び、無料で相談にのってくれるサービス。介護者の気力体力、家の構造を見極め、世帯ごとに適した介護方法や介護用品を助言して、少しでも楽になるように手助けする。

 悩みは夫の入浴だった。大の風呂好きなのに、浴槽に入れないため長いことシャワーだけ。訪れた相談員は、転倒防止の手すりをつけ、四方に持ち手があり茂夫さんの体を支えやすい「介助用ベルト」を使うことを勧めた。夫婦がともに転ぶ恐れを指摘し、入浴介助にヘルパーを呼ぶことも提案した。

 孤独になりがちな家族介護。市家族介護者支援センター統括相談員の高橋芳恵さんは「レッスンでは介護者の努力を受け止め、安心感を与えることも大切にしている」という。

 芙佐子さんは「介護の素人なので手探り状態。お父さんに今、死なれては困る。実地で教えてもらい助かった」と満足げな様子。「夫婦で言いたいことは言うようにしている。おなかにしまっていても顔に出るもの」と笑う。茂夫さんは神妙な表情で「まさか自分がこんな状態になるとは。妻の存在はありがたい。逆の立場だったら、できない」と感謝を口にした。

同世代と悩み共有

 湯気のたつ手作りおでんにビール。3月のある土曜日の夜、東京都内のビルの一室で、20〜50代の男女8人が食卓を囲んでいた。楽しげな雑談は一転して「介護のゴールは死ですから」「在宅も10年続くとどうなるのか……」。真剣なやりとりになる。

 NPO法人介護者サポートネットワークセンター「アラジン」が、親を介護する独身者らを対象に月1度開く「シングルの若者ひろば」の様子だ。

 参加費は1300円で、アラジン運営のカフェで食べたり飲んだりしながら懇談する。牧野史子理事長は「年齢が若いほど同じ世代の介護経験者がいない。親を助けようと懸命になり、自分の人生を見通せなくなる。悩みを共有し、支える場を提供したい」という。

 参加者の一人、40代の男性会社員は認知症の母(80)の面倒をみている。徘徊(はいかい)が始まり「母の症状を安定させたい」と、昨年10月から1年間の介護休暇を取っている。

 発症は5年前。家族の面倒をよくみてくれた優しい母が怒りっぽくなった。会話も成立しない。記憶の中の母と今の母を比べて、なかなか現実が受け止められなかった。

芽生えた「恩返し」

 慣れない料理や洗濯、掃除を始め気づいたことがある。重労働の家事を、当たり前のように専業主婦の母一人に背負わせていた。「介護はせめてもの恩返し」だと思う。

 同じ境遇の介護者と話がしたくて、若者ひろばに参加し始めた。「箸を使えなくなったら、おにぎりを作るといい」。そんな工夫を聞くと参考になった。自分の状況も積極的に話すようにしている。母の通院歴や投薬の経過をまとめた紙を見せると仲間たちに驚かれ、感心された。男性は言う。「一人で考え込むと悪い方向に傾きやすい。共感の場があることでリフレッシュされ、介護と向き合いやすくなる」

 今年2月、母は自宅近くのグループホームに入所した。毎日様子を見に通う。ホームの細やかなケアに加え、母に適した薬を医師と探る中、母が笑顔を見せるようになった。

 人の輪に支えられて得た、平穏な日々。少しでも長く続くことを願っている。=つづく

「緊急時サービス」が要望1位

 2015年版高齢社会白書によると、主な介護者の6割以上が要介護者等と同居しており、続き柄の内訳は配偶者が26.2%▽子が21.8%▽子の配偶者が11.2%−−などとなっていた。介護者の性別は女性が多いが、男性も約3割を占める。

 介護者を支援する日本ケアラー連盟(東京都新宿区)は、15年に「介護者がほしい支援」について、町村部と都市部の2地域で調査した。その結果、両地域ともに1位は「介護者の緊急時のサービス」だった。2、3位については、町村部では、介護が必要な人へのサービスや制度の充実▽年金受給要件に介護期間を考慮。都市部では、年金受給要件に介護期間を考慮▽地域や職場など社会の介護者への理解−−と続いた。

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