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介護のとき

4止 淑徳大教授・結城康博氏、作家・ねじめ正一氏に聞く

親だからこそ無理しない

 核家族化が進み、家族機能が低下している。親の介護が現実のものとなったとき、どうすればいいのだろうか。連載を締めくくるにあたり、介護職の経験を持つ淑徳大教授の結城康博氏と、認知症の母親を介護する直木賞作家のねじめ正一氏に聞いた。

同居こだわらずに 結城康博氏

−−高齢者の独居や夫婦だけの世帯が増えている。子供は親の介護とどう向き合えばいいのか。

 親の介護は突然やってくるうえ、その期間が1年になるか、10年になるか、先が見えない。だからこそ、無理のない支援を知ってほしい。

 まずは親子が離れて暮らす遠距離介護だが、子供が直接面倒を見るのではなく、今ある在宅介護サービスなどの社会資源を上手に利用して親を支えると、割り切って考えた方がいい。その際、家族の重要な役割は「保証人」になることだ。家族主義の日本において、物事の最終的な決定権は近しい他人より遠くの親族にある。不測の事態が生じた際に、電話でもいいので連絡が取れ、指示を出し、責任を持つ家族がいるだけで、ケアマネジャーやホームヘルパーも非常に動きやすくなる。必要に応じて、駆けつけられる態勢は整えておきたい。

−−介護イコール同居と考えられがちだが?

 年老いた親と同居しないことが親不孝だ、という価値観を捨てたい。元気な家族が一緒にいれば面倒を見てくれるので大丈夫と思われ、介護サービスが使いにくくなる。独居高齢者のほうがサービスを利用しやすく、財政負担も少ない。常時介護が必要になった時、特別養護老人ホーム(特養)にも入りやすくなる。

 独身の子供が親を介護する「シングル介護」も、別居のほうが共倒れを防げる。特に親一人子一人で、親の介護で仕事を辞めては、貧困に陥りかねない。日ごろはプロの手を借り、責任はしっかり持つ介護を提案したい。介護者の生活も守れるので、長い目で見た時、在宅介護を続けやすい。

−−介護離職する人が年間約10万人いるとされる。

 全国的に介護人材が慢性的に不足しているため、住む地域の社会資源が整備されているかどうかといった「運」次第であるのも否めない。

 育児・介護休業法で定めた介護休業は93日間だが、仕事と両立させる環境を整えるのには短い。特養の場合、入所までの平均期間は1年3カ月。法の改正により3回までの分割取得が可能になったが、離職防止には弱いのではないか。介護休業の規定自体がない企業もあるのが実態だ。

 安心できる介護システムには「在宅」の延長線上に、いつでも入れる「施設」が欠かせない。超高齢化社会において、介護離職による労働力の損失に歯止めをかけるためにも、高齢者の関連経費は社会投資といえる。

絶望から得た救い ねじめ正一氏

−−いつごろから介護を?

 2010年の秋ぐらいに、認知症ということを意識した。母の話が急に男言葉になって、おかしいなと。対応の仕方や、どこの病院に入れたらいいのかなと本当に困った。そのうちに妄想が始まった。

 俺は言葉で生きている人間なので最初はどきっとしたけど、お袋の所に行く度に違う妄想が湧いてきて、「認知症の言葉ってひょっとして詩の言葉より面白いかもしれない」と思った。ただ弟は大変だった。1〜2時間しか眠れないこともあったんじゃないかな。

−−介護のイメージは、あった?

 全然。うんちの処理も、普通の人が始末するより、5倍くらい時間がかかったんじゃないかな。うんちが敷布についたり、自分の体についちゃったりして。

 妄想でわめいている時の母親って、今までの母親とやっぱり全然違う。認知症というのは、そういうことなんだけど、自分の中では、こんなに人格が変わるんだという納得はなかなかできなかった。

−−症状が進み、ねじめさんの名前を思い出せなくなった。

 特に僕ら言葉の人間なんで、お袋から言葉がなくなっていくというのは、ひょっとしたらもう、人間として完全に壊れちゃうのではと、マイナスの方に考えちゃう。コミュニケーションがとれなくなっていくことに対して寂しくなった。でも、赤ちゃんで生まれて、一生懸命言葉を覚えた人間が、またその言葉を忘れて、言葉から実は解放されていくという、人間としては良いことなんじゃないかなと思うようにした。言葉が無くなっていくことに対して、絶望感があったけど、元に戻る、順番として正しいんだって自分が思い直し、すごく気持ちが楽になった。

 今は介護施設にいて、ほとんど寝たきり。ただ、笑いながら話しかけるのと、普通に話すのと、お袋の反応が違う。なるべく夜ご飯は自分が食べさせる。30〜40分かけて。

 仕事も辞めてもいいと思ったし、仕事なんかやっている場合じゃないだろうと思った。でも、自分で稼がないと。介護施設を使うなりして、自分の負担を軽くして、長期戦で認知症の面倒を見ていくというふうに変えていかないと、こっちの方が参っちゃう。

−−体験を本にまとめたが?

 親子関係の情の強さ、深さ、もろさがここに入っている。作者の持っている情のバランスの悪さ、欠けてるものと豊かなものが、この本にはすごく出ているような気がする。

    ◇

 この連載は柴沼均、池乗有衣、西田真季子が担当しました。=おわり

人物略歴

ゆうき・やすひろ

 1969年生まれ。専門は社会保障論、社会福祉学。ケアマネジャーなどとして介護系の仕事に10年間従事。著書に「在宅介護−『自分で選ぶ』視点から」など。

人物略歴

ねじめ・しょういち

 1948年生まれ。直木賞を受賞した「高円寺純情商店街」など著書多数。母の介護をつづった「認知の母にキッスされ」(中央公論新社)を2014年出版。

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