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若島正・評 『「痴人の愛」を歩く』=樫原辰郎・著

 (白水社・2376円)

 一人の人間が、ある一冊の小説に魅了される。その魅惑は、読み終わってからも消えることがなく、いつまでも頭の片隅に残りつづける。そんなとき、その人間にとってその小説は特別な一冊になる。本書の著者である樫原辰郎にとって、二○歳を少し過ぎた頃に初めて読んだ、谷崎潤一郎の『痴人の愛』はそういう特別な一冊だった。そのときに覚えた違和感を謎として抱え込み、それから二〇年余りたった今、その謎とふたたび向き合って、個人的な一つの答えを出したのが、本書『「痴人の愛」を歩く』である。

 題名のとおり、著者は『痴人の愛』の舞台設定になっている土地を実地に歩いてみるところから始める。主人公ナオミの出生地である千束町と、そこに接したかつての歓楽街浅草六区を皮切りにして、ナオミが語り手の譲治と住んだ家がある大森、そして最後には横浜である。小説の中の土地を歩くことは、単なる地理的な遊歩ではない。ほぼ一世紀隔たった、大正時代という過去と二一世紀の現在を時間的に往復することにもなる。

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