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ラトル&ベルリン・フィル来日公演

心震えた「英雄」第2楽章 静寂の中に映像がくっきり浮かんだ

撮影:三好英輔

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 ひょっとしたら、このコンビでの日本公演は最後になるかもしれない。そんなことを耳にすると寂しいやら、名残惜しいやら。特別な思いが交錯した。

     サイモン・ラトル(61)率いるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2年半ぶり6度目となる日本公演。プログラムはベートーヴェンの交響曲ツィクルスで、5月11日から15日までの5日間、東京・港区のサントリーホールを熱狂に包んだ。

     初日の11日は1番と3番の組み合わせ。コンサートマスターの樫本大進、第1バイオリンの町田琴和、そして首席ヴィオラ奏者の清水直子と日本人3氏がそろって帯同し、その姿がステージ上で見られただけでうれしくなり、誇らしい気持ちにもなった。清水さんは相変わらず美しく、町田さんはいくぶんスリムになっていたように映った。

     休憩を挟んでの後半。1805年に初演されたという第3番「英雄交響曲」の魂のこもった演奏は表現出来ないほどの高みに達していた。とりわけ第2楽章(葬送行進曲)には心が震え、静寂の中に映像がくっきりと見えるようだった。

     クラウディオ・アバドの後を受けて2002年から首席指揮者・芸術監督に就任したラトルは18年に任期満了を迎える。残された時間はわずかだが、これまで培ってきたベルリン・フィルの関係が円熟のときを迎えている。集大成の音といえばいいのか、いつしか呼吸するのも忘れるほど引き込まれていた。

     観客の咳(せき)払いや物を落としたりする音が気になる演奏会も時にあるが、この第2楽章の演奏中はしわぶき一つ立たず、静寂の中で葬送の列が続いた。巨匠の統率力が客席にも及んだからのような一体感。聴衆も陶酔していた。

    撮影:三好英輔

     世界最高峰のオーケストラと誰もが認めるベルリン・フィル。4月8日と10日には小澤征爾(80)が7年ぶりに本拠のベルリン・フィルハーモニック・ホールで共演。2000人の観客が温かく迎える中で、ベートーヴェンの「エグモント」序曲や「合唱幻想曲」などを披露した。ベルリン・フィルの公式サイトでも「小澤征爾の帰還」と銘打ち、「病気のため長らく共演できなかったが、客演指揮者となった1966年から50年となる記念の年に戻ってきた」と大歓迎。このコンサートを観賞した作家の村上春樹氏(67)が発売中の「文芸春秋」6月号に特別寄稿し、熱狂と興奮ぶりを伝えている。村上氏には「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(新潮社)という対談集があって、これも楽しい。

     5月6、7日の両日にはNHK・BSプレミアムの「プレミアム・カフェ」という番組で「ベルリン・フィルの選択」(03年初放送)と「日本人とカラヤン」(08年放送)が再放送され、つい見入ってしまった。

     やはり特別なオーケストラである。ラトルの後任はキリル・ペトレンコ(44)に決まっている。1945年、ドイツ降伏後のベルリンで暫定の首席指揮者に就き、まもなく不遇の死を遂げたレオ・ボルヒャルト以来となるロシア出身の首席就任。ラトルからバトンを受け継いで、どんな音色に変えていくのか、楽しみだ。ちなみにアバドはマーラーの交響曲1番「巨人」(89年12月16日)、ラトルはトーマス・アデス「アサイラ」とマーラーの交響曲5番(02年9月7日)を、それぞれ就任公演で演奏。ペトレンコはどの曲で首席デビューを飾るのか、推理するのも一興だ。

    (スポーツニッポン新聞社 文化社会部編集委員 佐藤 雅昭)

    筆者プロフィル

     佐藤雅昭(さとう・まさあき) スポニチ文化社会部編集委員。映画、音楽、落語をこよなく愛する。毎日新聞・日曜版で「深読みエンタ」を連載中。

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