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金言

忘れられないサミット=西川恵

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     米大統領は年1回開かれる主要国首脳会議(G7もしくはG8サミット)に出席する前、別の国に立ち寄ってから同首脳会議に乗り込むことがある。この場合、米大統領は立ち寄った国と同首脳会議を密接に連動したものとして捉えている。日本に来る前、3日間滞在したベトナムもそうだったと思われる。

     米大統領がサミット前に外国に立ち寄るのは、その国の課題を携えて同首脳会議に臨み、議論をリードする意図がある。世界が注目する同首脳会議は、課題に焦点を当てる格好の機会だからだ。

     忘れられない同首脳会議に1989年7月、パリで開かれたアルシュ・サミット(G7)がある。この時、ブッシュ米大統領(父)はパリに乗り込む前、ポーランドに立ち寄った。同国は東欧の社会主義圏で初めて複数政党制による自由選挙に踏み切ったばかりで、同大統領は改革を指導してきた自主管理労組「連帯」のワレサ氏と会談した。

     ここでワレサ氏は1カ月前の中国の天安門事件を引き合いに「経済改革だけでは中国のように政治に潰される。東欧の改革が中国の二の舞いになるのを防ぐためには、経済改革に先立つ政治改革がなければならない」と、強く西側先進国の支援を求めた。

     アルシュ・サミットでブッシュ大統領は東欧の政治改革支援で議論をリード。参加7カ国は「政治改革を進める国には援助する。後ろ向きの国には援助しない」と、援助と人権をリンクした人権外交を打ち出す。改革に後ろ向きの東独(当時)、ルーマニアは孤立し、11月の「ベルリンの壁」崩壊につながった。

     オバマ大統領の伊勢志摩サミットに向けたベトナム立ち寄りの狙いの一つは言うまでもなく南シナ海問題だろう。中国の威圧的な海洋進出に対し、米大統領は日本と連携して、ベトナム、そしてフィリピンなどを引き合いに、中国との経済関係に配慮して強い対中非難に慎重な欧州首脳を説得するとみられる。

     二つ目の狙いは、仇敵(きゅうてき)との和解の大切さへのシグナルだ。かつて敵だった日本とも、いまは同盟国として地域の安定と平和に取り組んでいる。これとの関連で、戦争犠牲者に対する哀悼の表明もオバマ大統領にとっては大事だったのではないか。ベトナムの聴衆を前に大統領は「戦争はどんな意図があろうとも、苦しみや悲劇をもたらすことを我々は学んだ」と語っている。

     ベトナム訪問はサミットのみならず、広島まで射程に入れた選択ではなかったかとさえ思える。(客員編集委員)

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