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佐藤優・評 『エンゲルス−マルクスに将軍と呼ばれた男』=トリストラム・ハント著

 (筑摩書房・4212円)

 カール・マルクス(1818〜83年)の盟友であったフリードリヒ・エンゲルス(1820〜95年)の思想は、常に過小評価されてきた。もっとも日本では、マルクス主義哲学者の廣松渉(ひろまつわたる)(1933〜94年)が、1968年に上梓(じょうし)した『エンゲルス論 その思想形成過程』(盛田書店)で、共産主義理解については、マルクスよりもエンゲルスの方が先行していたという解釈を提示し、大きな衝撃を与えた。トリストラム・ハント(74年生まれ)は、英国の歴史学者で2010年からは下院議員(労働党)をつとめる政治家でもある。ハントは、文献資料を丹念にあたり、先入観にとらわれずにエンゲルスの実像を解明しようとする。共産主義については、マルクスよりもエンゲルスの方が先行していたという廣松渉の見方は、ハントの研究によっても裏付けられる。もっともハントは、マルクスもエンゲルスも、当初は共産主義に懐疑的で、かなり遅れて共産主義的世界観を持つようになったと見ている。

 エンゲルス自身は、父親の家業を継いだ資本家だった。その利潤で、マルクス一家の生活を支え、共産主義運動を展開していたのである。エンゲルスの家族は、禁欲と勤勉を重視するプロテスタンティズムのカルバン派に属していた。エンゲルスは、主観的にはかなり早く無神論者になったが、生涯、カルバン派的な勤勉さと、自己の能力を他者のために使うという倫理観から抜け出すことができなかった。

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