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増税先送りの明暗

先送り経済/上 「約束違反」に疑心暗鬼 財務省・日銀、リスク増幅恐れ

日本経済の今後は?

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 有効求人倍率が初めて全国で1倍を上回り、倒産件数もバブル期の水準まで低下、賃金も上昇している−−。1日夕、アベノミクスの成果を披露しながら、消費税増税の再延期を表明した安倍晋三首相。「この状況で増税できないなら、いつできるんだ」。財務省幹部は無力感を漂わせた。

     再延期の道筋が開き始めたのは年明け早々だ。株安や円高で企業収益が下振れし、金融市場は再延期を織り込み始めた。むしろ、「増税実施」なら失望感から株安が進みかねない状況で、選択肢は限られてきた。

     本来なら増税の地ならしに動く財務省も手足を縛られていた。ある職員は「幹部から『動くな』と指示が出ていた」と明かす。首相が2014年11月に最初の増税延期を決める前には、自民党議員らに増税の必要性を「ご説明」する猛烈な根回しに動いたが、官邸から見れば「圧力をかけるような動き」(政府関係者)。菅義偉官房長官らの怒りを買って逆効果となり、今回は封印した。増税に備えて大型の財政出動で景気を支える可能性を首相に示唆したが、反応は無かった。

     首相の懸念も、もっともだ。税率が10%になれば、年収500万円の世帯で年5万円ほど負担が増える。今春闘の賃上げ効果が吹き飛ぶほどの額だ。首相は1日の記者会見で「リスクを振り払う」と強調。景気を盤石にした上で増税に踏み切り、景気と財政再建の二兎(にと)を得るシナリオを描いてみせた。

     怖いのは、封じ込めたはずのリスクが増幅され、形を変えて跳ね返ってくる事態だ。格付け大手フィッチ・レーティングスは1日、再延期に対し「財政再建の政治的公約の信頼性を損なう」と警告する声明を発表した。最初の増税延期では、ムーディーズが日本国債を上から5番目の「A1」に1段階格下げ。スタンダード・アンド・プアーズも昨年9月、アベノミクスの景気浮揚効果を疑問視し、ムーディーズと同水準まで下げた。今回の延期で、2度にわたり財政再建の約束が破られたことになる。もしムーディーズが日本国債を2段階引き下げれば、アフリカの途上国ボツワナ以下になった02年より低下。国債の信用と買い手を失い、金利が急騰(債券価格は下落)してもおかしくない。

     当面は、異次元緩和を進める日銀が日本国債を買い占めて金利を抑え込む。皮肉なのはデフレ脱却が近づくに従い、政府・日銀が封じこめたリスクと直面することだ。金融緩和を終えようと国債購入を減らす時、日本の財政が改善していなければ、国債の買い手がつかず、金利が跳ね上がりかねない。長期金利が1%上昇すると、国債を保有する邦銀全体で7・5兆円の損失が発生する。14年度の邦銀全体の最終利益の倍を超える額だ。「異次元緩和の『出口』のハードルはますます高くなる」。日銀幹部は表情を硬くする。

     安定財源が不足すれば、政府予算の硬直化も進む。既に、借金返済や社会保障費など、削りにくい歳出が全体の約7割を占める。全国で老朽化が問題となっている道路や橋などインフラ施設の更新も「予算確保が難しくなり、対象を選別せざるを得ない」(財務省幹部)状況だ。こうした中、16年度の少子化対策費の2倍に当たる年4・4兆円の税収を、再延期で得られなくなる。

     「日本が信用を維持するには、債務削減の計画を具体的に決めなければならない」。経済協力開発機構(OECD)のランダル・ジョーンズ日本課長は1日の記者会見でクギを刺したが、現実はどうか。首相の経済政策のブレーン、本田悦朗内閣官房参与は5月30日に出演したテレビ番組で、「2年半(の延期)で大丈夫なのか、誰も分からない」と漏らした。19年10月の増税実施にさえ、早くも疑心暗鬼が広がっている。

         ◇

     再び延期された消費税増税。景気を下支えするのか、リスクを先送りするだけなのか。背景と影響を点検する。

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